ロールモデルが見つからない本当の理由|「理想の一人」を探すのをやめる考え方

2026.07.30カテゴリ:働き方・生き方・価値観・時事ニュース読了 13執筆・監修:Talentier編集部
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先に結論SUMMARY

ロールモデルが見つからないのは、あなたの探し方が悪いからではありません。

ロールモデルが「いない」人は8割近くにのぼり、いないほうが多数派です。見つからない最大の理由は「自分と似た境遇の人がいない」こと。転職や副業、育児との両立などでキャリアの道筋が枝分かれし、そのまま重ねられる一人が構造的に存在しにくくなっただけです。 理想の一人を探すのはやめて、仕事観はこの人、働き方はこの人と、要素ごとに借りる相手を分けてみてください。

「5年後、どうなっていたいですか」

面談でこう聞かれて、答えに詰まったことはないでしょうか。なりたい姿が浮かばない。目標にできる先輩も、身近に見当たらない。そして「自分はキャリアを真剣に考えていないのかもしれない」と、うっすら後ろめたくなる。

もしそういう感覚があるなら、先に伝えておきたいことがあります。それは、あなたの職場が特別なわけでも、あなたの探し方が悪いわけでもない、ということです。目指せる人が見つからないのは、いま多くの人に共通して起きていることで、しかもその理由には、はっきりした構造があります。

2026年7月に公表されたJob総研の「2026年 キャリアに関する意識調査」に、その実態が表れています。全国の20〜50代の社会人469人を対象にした調査です。

ロールモデルが欲しいと答えた人は73.5%。ところが、ロールモデルは見つけにくいと答えた人は79.6%。そして実際に「ロールモデルがいない」人は76.8%にのぼります。欲しいと思っている人の方が多数派で、見つけにくいと感じている人はさらに多い。つまり、いないのが標準的な状態なのです。

この記事では、なぜ見つからないのかという構造を整理したうえで、「理想の一人」を探し続けるのをやめて、別の考え方に切り替える方法をお伝えします。

ロールモデルがいないのは、あなただけではない

まず、数字をもう少し丁寧に見ていきます。

同じ調査で、キャリアや仕事の悩みが「ある」と答えた人は85.1%。8割を超える人が、何らかの悩みを抱えています。そのうえで、ロールモデルが必要だと考える人は70.1%。必要だと感じる理由は、「目標や方向性を描きやすい」が62.0%で最多、次いで「行動や判断の参考になる」が46.8%、「成長や挑戦へのモチベーションになる」が44.7%でした。

つまり多くの人が、キャリアに悩みを抱え、道しるべになる存在を求めています。それでも、8割近くが見つけにくいと感じている。

年代別に見ると、この傾向は若い層でより強く出ます。ロールモデルが欲しいと答えた人は20代が81.4%で最多、次いで30代が75.1%。見つけにくいと答えた人も20代が80.6%で最多でした。将来像を描きたい気持ちが強い年代ほど、参考にできる人が見つからないという、ややねじれた状況になっています。

ここで押さえておきたいのは、この不足が「個人の努力不足」の話ではないということです。8割が見つけにくいと言っている現象は、探し方の巧拙ではなく、環境の側で起きていると考えるほうが自然です。だとすれば、次に確かめるべきは「なぜ見つからないのか」です。

見つからないのは、数の問題ではない

ロールモデルがいないと答えた360人に、その理由を聞いた結果が、この調査でいちばん示唆的な部分です。

最も多かったのは「自分と似た境遇の人がいない」で50.0%。次いで「身近に参考になる人がいない」が37.5%、「理想的だと思える人がいない」「真似できると思える人がいない」がそれぞれ20.3%でした。

注目してほしいのは、1位が「人がいない」ではなく「自分と似た境遇の人がいない」だったことです。職場に先輩がいないわけではない。優秀な人がいないわけでもない。ただ、自分と重ねられる人がいない。

これは、キャリアの道筋が枝分かれしたことの当然の帰結です。かつては、同じ会社で経験を積んで昇進していくという、比較的共通したコースがありました。だから上司や先輩の歩みを、自分の10年後として重ねやすかった。

いまは違います。転職する人もいれば、社内で専門性を深める人もいる。副業を持つ人、育児と両立する人、地方に移って働く人もいる。選べる道が増えたぶん、他人の歩みをそのまま自分に当てはめることが難しくなりました。調査の自由記述にも、一社で勤め上げる価値観が染み付いた上の世代を参考にできない、専門性を伸ばしたいのに年齢が上がれば管理職という空気がある、キャリアと家庭の両立事例が見つからない、といった声が並んでいます。

つまり、ロールモデル不足とは「数が足りない」問題ではなく、「そのまま重ねられる一人がいない」問題です。選択肢が増えたことの副作用であって、あなたの周囲が貧しいからではありません。

もう一つ、この調査には見落とされがちな結果があります。ロールモデル不足は女性のキャリア課題として語られることが多いのですが、今回の調査では、ロールモデルが欲しいと答えた割合は男性75.9%、女性70.1%。見つけにくいと答えた割合も男性81.1%、女性77.5%と、いずれも男性の方が高く出ました。これは女性側の課題が解消されたという話ではなく、将来が読みにくいという状況が性別を問わず広がっていることを示しています。昇進中心の分かりやすいコースが機能しにくくなった分、これまで前提が明確だった層にも迷いが生じている、と読むのが妥当でしょう。

目指す人も、相談する人も足りていない

ロールモデルの話と並んで、この調査にはもう一つの不足が記録されています。相談相手です。

キャリアの相談相手がいるかを聞くと、「いない派」が59.7%。内訳は「いない」が42.6%、「探しているが見つからない」が17.1%でした。理由の1位は「本音を話しにくい」で43.9%、次いで「真剣に話せる人がいない」が31.1%、「職場の人間関係が希薄」が17.5%です。

目指すべき人が見つからず、相談できる人もいない。悩みを抱えている人が8割を超えているのに、その悩みを置く場所がない状態です。

ただ、これも個人の人間関係の問題として受け取る必要はありません。転職が当たり前になり、組織はフラットになり、リモートワークも広がりました。その結果、同じ職場で長い関係を築いたり、日常的にキャリアの話をしたりする機会自体が減っています。上司や先輩が「目指す人」と「相談相手」の両方を兼ねていた時代の仕組みが、単純に成立しにくくなった。そう捉えるほうが実態に近いはずです。

だとすれば、やるべきことは「昔のような一人の先輩」を探し続けることではありません。仕組みが変わったなら、こちらの探し方も変えるほうが早い。ここから、その具体的な話に入ります。

「理想の一人」を探すのは、やめていい

この調査には、実際にロールモデルがいる人への質問もあります。その答えが、発想を変えるヒントになります。

ロールモデルがいると答えた109人に、それはどのような人かを聞くと、「職場の先輩」が59.6%で最多でしたが、次に多かったのが「特定ではなく複数人」で28.4%でした。3割近くの人が、一人ではなく複数の人を参考にしています。

さらに、ロールモデルのどんな要素を参考にしているかを聞くと、「仕事に対する考え方」が56.1%、「はたらき方」が49.8%、「仕事の成果」が48.9%と続きます。つまり、人そのものを丸ごと真似しているというより、その人の一部を参考にしているのです。

ここが、この記事でいちばん伝えたい転換点です。ロールモデルを「自分の将来像そのものを体現している、たった一人」だと定義すると、多様化した時代にそんな人はほぼ存在しません。だから探しても見つからず、いつまでも「いない」と感じ続けることになります。

そうではなく、要素ごとに借りる相手を分けてしまう。仕事への向き合い方はあの先輩を、働く時間の作り方は別の部署のあの人を、家庭との両立の仕方は社外の知人を。一人に全部を求めなければ、参考にできる人は急に増えます。

考えてみれば、自然な話でもあります。年収も、働き方も、専門性も、家庭のことも全部が自分の理想通りで、しかも自分と似た境遇の人。そんな一人を探すのは、条件を全部満たす物件を探すのに近い難しさです。それより、条件ごとに参考にする相手を分けたほうが、現実的に前に進みます。

自由記述にあった「子育てしている女性の部長がいたが、パワフルすぎて自分にはできないと尻込みした」という声は、まさにここに関わります。丸ごと重ねようとすると「自分には無理」で終わってしまう。けれど、その人の時間の使い方だけ、あるいは周囲への頼り方だけを借りると考えれば、話は変わってきます。

実際にやってみるときのコツを、いくつか挙げておきます。

一つめは、参考にする単位を小さくすることです。「あの人みたいになりたい」ではなく、「あの人の、会議で反対意見を言うときの言い方」くらいまで絞る。単位が小さいほど、真似できる可能性は上がります。人格や実績を借りるのは無理でも、振る舞いの一部なら借りられます。

二つめは、完璧でない人からも借りることです。ロールモデルという言葉には「立派な人」という響きがありますが、全体としては尊敬できない相手でも、一点だけ優れていることはよくあります。仕事の進め方は雑だけれど断り方だけは上手い先輩、というような人からも、その一点は学べます。

三つめは、社外まで範囲を広げることです。調査でロールモデルがいる人の回答では「職場の先輩」が59.6%で最多でしたが、「友人」も17.4%を占めています。職場の中だけで探すと、選択肢は自分の会社のキャリアパスに限られます。前職の同僚、同業の知人、社外の勉強会で会う人など、範囲を広げれば、自分に似た境遇の人に当たる確率も上がります。

四つめは、要素と相手を書き留めておくことです。頭の中だけで持っていると、いざ迷ったときに思い出せません。「時間の使い方=Aさん」「専門性の伸ばし方=Bさん」と書いておくだけで、判断に迷ったときに立ち返る先ができます。

借りる前に必要なのは、自分がどこで迷っているかの整理

ただし、複数人から要素を借りる方法には、一つ前提があります。自分が何を参考にしたいのかが分かっていないと、誰の何を借りればいいのか選べない、ということです。

この調査で、悩みがあると答えた339人に相談したい内容を聞くと、「年収・収入」が26.3%で最多、次いで「はたらき方と年収のバランス」が25.1%、「スキル・専門性」が21.8%でした。

2位に注目してください。「はたらき方と年収のバランス」。これは、二つの軸が絡まった状態です。年収を上げたいのか、働く時間を確保したいのか、あるいはその両方をどこで折り合わせたいのか。この絡まりが解けていないと、「あの人はすごいけれど自分には合わない」という感想で止まってしまいます。

逆に、自分が迷っているのは主に年収の軸だと分かっていれば、年収の伸ばし方だけを誰かから借りればいい。時間の使い方に迷っているなら、その部分だけを見ればいい。要素に分けて借りるという方法は、自分側も要素に分けて把握できていて初めて機能します。

つまり順番はこうです。ロールモデルを探すのが先ではありません。自分がどこで迷っていて、何を大事にしたいのかを言葉にするのが先。それが決まると、参考にすべき相手は、探すより先に目に入ってくるようになります。

軸を切り分けるとき、手がかりになる問いをいくつか挙げます。答えを一つに決める必要はなく、どちらに引っかかるかを見るためのものです。

いまの働き方を10年続けられるかと考えたとき、最初に無理だと思うのはどの部分か。時間なのか、収入なのか、仕事の中身なのか。この問いは、迷いの所在をだいたい教えてくれます。

もう一つは、直近1年で「この働き方はいいな」と感じた瞬間を思い出す問いです。人ではなく場面で思い出すのがコツです。誰かの働き方に感心した場面があれば、そこに自分の借りたい要素が含まれています。

さらに、譲れないものを一つだけ選ぶとしたら何かを考えてみる。年収、勤務地、裁量、専門性、時間の融通。全部大事だと言いたくなりますが、無理に一つ選んでみると、優先順位のいちばん上が見えてきます。

こうして軸が切り分けられていると、他人を見たときの受け取り方が変わります。以前は「すごい人だな」で終わっていた相手から、「この部分は自分にも使える」と持ち帰れるようになる。ロールモデルが見つからないと感じていた原因の一部は、実は自分側の軸が絡まっていたことにあるかもしれません。

自分の軸を言葉にする、最初の一歩

では、自分の軸をどう言葉にするか。おすすめなのは、これまでの仕事を書き出してみることです。

将来像から考えようとすると、ほとんどの人は手が止まります。まだ経験していないことは、想像しようとしても輪郭が出ないからです。それより、これまで自分が何をしてきて、どんなときに手応えを感じ、どんな条件だと苦しかったかを書き出すほうが、はるかに具体的な材料が出てきます。過去は、すでに自分の中にある情報です。

書き出してみると、自分が何を大事にしてきたかが見えてきます。任される範囲の広さに手応えを感じてきた人もいれば、丁寧に品質を作り込むことに満足を覚えてきた人もいる。人に教える場面で力が出た人もいるでしょう。それが分かれば、誰の何を参考にしたいかも自然と決まってきます。

書き出し方に決まりはありませんが、迷ったら3つの列で並べてみるのが分かりやすいです。何をしたか、そのとき何に手応えを感じたか、何が負担だったか。この3つを、直近の仕事から順に埋めていきます。成果の大きさは気にしなくていい。淡々と事実を並べるだけで、手応えと負担のパターンが浮かんできます。

もう一つ、意外に効くのが、他人に説明する形で書くことです。頭の中で振り返るだけだと、「まあ普通にやってきた」で終わりがちです。誰かに読ませる前提で書くと、何をしてきたのかを具体的に言葉にせざるを得なくなり、その過程で自分の輪郭が出てきます。職務経歴書という形式が役に立つのは、まさにこの点です。転職のための書類というより、自分を第三者に説明するための整理の道具として使えます。

Path〈パス〉は、AIで履歴書・職務経歴書を作成できるサービスです。完全無料で、採用実務の経験を持つ人が監修しています。質問に答えていくと、これまでの経験が言葉になって並んでいきます。転職するかどうかを決めていない段階でも、自分の来歴を一度形にしておくと、それが自分の軸を確かめる材料になります。目指す人を探す前に、自分の現在地を持っておくということです。

自分の傾向をもう少し掴んでおきたいときは、診断サービスのInsight〈インサイト〉も使えます。キャリアギャップ診断とメンタルタイプ診断があり、いずれも無料で、いまの自分がどういう傾向を持っているかを整理する入口になります。

まとめ

ロールモデルがいないのは、あなたのせいではありません。ロールモデルが欲しい人は73.5%、見つけにくいと感じる人は79.6%、実際にいない人は76.8%。いないのが多数派です。

そして見つからない最大の理由は「自分と似た境遇の人がいない」ことでした。キャリアの選択肢が増え、道筋が枝分かれした結果、そのまま重ねられる一人が存在しにくくなっただけの話です。

だとすれば、探し方を変えるのが早い。仕事への考え方はこの人、時間の使い方はこの人、家庭との両立はこの人と、要素ごとに借りる相手を分ける。実際にロールモデルがいる人のうち3割近くが、すでに複数人を参考にしています。

そのために先に必要なのは、自分がどこで迷っていて何を大事にしたいのかを言葉にすることです。理想の一人を探し続けるより、自分の現在地を書き出すほうが、次の一歩はずっと近くなります。

よくある質問

Q. ロールモデルがいないと、キャリア形成に不利になりますか?

いないこと自体が不利になるわけではありません。Job総研の調査ではロールモデルがいない人が76.8%で多数派であり、いない状態が標準的です。ただし、ロールモデルが必要だと考える人の理由として「目標や方向性を描きやすい」が62.0%で最も多く、参考になる存在があると方向性を決めやすくなるのは事実です。一人の理想像を探すのではなく、要素ごとに参考にする相手を分けて持つ形が現実的です。

Q. ロールモデルは年上の人でなければいけませんか?

その必要はありません。調査でロールモデルがいる人の回答では「職場の先輩」が59.6%で最多ですが、「友人」が17.4%、「特定ではなく複数人」が28.4%と、対象は多様です。参考にする要素として最も多かったのは「仕事に対する考え方」(56.1%)で、これは年齢や役職と必ずしも結びつきません。年下や同年代から借りられる要素もあります。

Q. 「複数人を参考にする」とは具体的にどうすればいいですか?

自分が迷っている軸ごとに、参考にする相手を分けて考えます。たとえば仕事への向き合い方は職場の先輩、働く時間の作り方は別部署の人、家庭との両立は社外の知人、というように分担させる形です。一人に自分の理想すべてを求めないため、「あの人は立派だが自分には真似できない」という行き止まりを避けられます。

Q. 身近に参考になる人が本当にいない場合はどうすればいいですか?

まず、それは珍しいことではありません。ロールモデルがいない理由として「身近に参考になる人がいない」が37.5%を占めています。この場合も、一人の完成形を探すより、要素単位で参考にできる人を社内外に広げて探すほうが見つかりやすくなります。あわせて、自分がどの軸で迷っているのかを先に整理しておくと、限られた出会いからでも必要な部分を受け取りやすくなります。

Q. キャリアの相談相手が見つかりません。どうすればいいでしょうか。

相談相手がいない人は59.7%で、理由の1位は「本音を話しにくい」(43.9%)でした。職場の関係が短期化し、キャリアを日常的に話す機会が減っていることが背景にあります。職場の中だけで探すのではなく、社外の知人や前職の同僚、転職エージェントなど、利害が直接ぶつからない相手を含めて考えると選択肢が広がります。相談の前に、自分の経歴と迷っている点を書き出しておくと、短い時間でも中身のある話ができます。

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