前回、東京で働くと手元にいくら残るのかを実額で見ていきました。賃金は全国平均より月7万3,300円多く、支出は月5万724円多い。差し引きすれば東京のほうが残る、という結果でした。
今回は関西です。そして数字を並べてみると、大阪は東京とはかなり違う形をしていました。
東京が「多く稼いで多く使う」街だとすれば、大阪は「そこそこ稼いで、あまり使わない」街です。大阪市の消費支出は月28万737円で、東京都区部より月7万円以上少なく、全国平均と比べても月2万円近く少ない。
しかも、支出が少ない理由がはっきりしています。ある費目で、全国平均より月1万円以上も安くなっていました。
この記事では、大阪・京都・神戸の3市を東京と比較しながら、関西で働くと生活がどうなるのかを見ていきます。前回と同じ項目、同じ実額での比較です。
なお、この記事は働く街ごとの年収と生活費を見ていくシリーズの第2回です。
賃金は、全国平均を上回る4府県のひとつ
まず収入から確認します。
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、全国の平均賃金は月33万400円でした。この数字を上回っているのは、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府の4都府県だけです。関西からは大阪府がここに入っています。
最も高い東京都は月40万3,700円で、全国平均を22%上回ります。大阪府は東京ほどではないものの、全国平均を超える水準にあります。
つまり、関西で働くという選択は、賃金の面で全国的に見れば不利ではありません。特に大阪は、上位4府県に入る数少ない地域です。
もちろん、これは都道府県全体の平均です。業種によっても企業規模によっても実際の水準は変わります。それでも、全国的な位置づけとしては上位にあると理解しておいてよいでしょう。
大阪の支出は、東京より月7万円少ない
次に支出です。総務省の家計調査(2024年)から、二人以上の世帯の1か月あたりの消費支出を見ていきます。
大阪市は月28万737円でした。東京都区部の月35万967円と比べると、月7万230円も少ない計算になります。年額にすれば84万円ほどの差です。
さらに、全国平均の月30万243円と比べても、大阪市は月1万9,506円少なくなっています。主要な都市のなかでは、支出が抑えられているほうです。
関西の他の都市も見ておきます。京都市は月29万5,508円、神戸市は月28万207円。京都は全国平均をやや下回る程度、神戸は大阪とほぼ同じ水準です。
つまり関西3市はいずれも、全国平均と同じかそれ以下の支出で暮らしています。
賃金が全国平均を上回りながら、支出は全国平均を下回る。この組み合わせは、家計にとっては有利な形です。東京の場合は賃金も支出も高く、差し引きで残るという構造でしたが、大阪は支出そのものが少ない。
大阪で最も安いのは、交通・通信費だった
では、大阪の支出が少ない理由はどこにあるのか。費目ごとに分解すると、はっきりした答えが出てきます。
最も差が大きかったのは交通・通信費です。大阪市は月3万1円で、全国平均の月4万1,588円より1万1,587円も安い。この差は、他のどの費目よりも大きくなっています。東京都区部の月3万9,287円と比べても、月9,286円安い計算です。
理由としては、公共交通機関の充実が考えられます。大阪市は地下鉄や私鉄の路線網が密で、車がなくても生活が成り立ちます。車の維持費、駐車場代、ガソリン代がかからない世帯が多ければ、その分が交通費全体を押し下げます。
京都市も月3万3,561円、神戸市も月3万2,937円と、全国平均を大きく下回っています。関西の主要都市に共通する特徴です。
次に安いのが光熱・水道です。大阪市は月2万1,488円で、全国平均の月2万3,110円より1,622円安い。神戸市は月1万9,611円とさらに安く、京都市も月2万653円です。関西3市はいずれも全国平均を下回っています。
温暖な気候で冬の暖房需要が小さいことが影響していると考えられます。
一方で、全国平均より高い費目もあります。食料は大阪市が月8万8,548円で全国平均より3,508円高く、神戸市は月8万8,991円、京都市は月8万7,246円といずれも全国平均を上回ります。ただし東京都区部の月10万189円と比べれば、1万円以上安い水準です。
教育費は、東京より月9,000円近く安い
ここで、教育費についても確認しておきます。
大阪市の教育費は月1万2,274円で、全国平均の月1万1,703円とほぼ同じ水準でした。東京都区部の月2万1,201円と比べると、月8,927円も安いことになります。年額にすれば10万円以上の差です。
京都市は月1万4,210円とやや高め、神戸市は月9,928円と全国平均を下回っています。
さらに、大阪府については制度面の事情もあります。大阪府は2024年度から高校授業料の無償化を段階的に進めており、2026年度には全学年で完全無償化が実現しています。所得制限はなく、公立・私立を問いません。世帯の所得を問わない無償化は全国で初めての取り組みです。
家計調査の数字は2024年のもので、無償化がまだ全学年に及んでいない時期のものです。したがって、現在の大阪府在住世帯の教育費負担は、この数字よりさらに軽くなっている可能性があります。
ただし、無償化には別の側面もあります。河合塾の教育情報サイトに掲載された大阪私立中学校高等学校連合会へのインタビューによれば、無償化が浸透するにつれて私立高校の志願者が増え、大阪の公私の進学比率は7対3から5対5に近づきつつあるといいます。さらに、高校の授業料が無償になったことで系列の中学から進学したほうが有利だと考える保護者が増え、私立中学校の志願者が顕著に増加しているという指摘もあります。
高校の授業料負担は消えても、その前段階である中学受験や塾の費用は残ります。制度の恩恵をどう受け取るかは、家庭ごとの選択によって変わってきます。
大阪で部屋を借りると、月6万5,701円
家賃についても見ておきます。ここまで使ってきた家計調査には持家の世帯も含まれているため、実際に部屋を借りたときの家賃は分かりません。持家の人は家賃を払わないので、平均が大きく下がってしまうからです。
賃貸の家賃を知るには、総務省の住宅・土地統計調査を見ます。
この調査によると、大阪市の民営借家の1か月あたり平均家賃は6万5,701円でした。全国平均は6万5,496円なので、ほぼ同水準です。
東京都は9万4,802円なので、大阪市はこれより月2万9,101円安いことになります。年額にすれば35万円ほどの差です。
関西の他の都市も見ておくと、神戸市が6万5,894円、京都市が6万3,759円。3市とも全国平均の前後に収まっています。府県単位では大阪府6万4,263円、兵庫県6万5,097円、京都府6万2,210円、奈良県5万7,664円です。
府県単位で見ると、大阪府6万4,263円、兵庫県6万5,097円、京都府6万2,210円、奈良県5万7,664円。東京都の9万4,802円と比べれば、関西はどの府県も3万円前後低い水準にあります。
ただし、これらはあくまで市や府県を均した平均値です。同じ大阪市内でも、梅田や本町に近い地域と郊外の区では家賃は大きく違いますし、兵庫県内でも人気の住宅地とそうでない地域では差があります。物件の広さ、築年数、駅からの距離によっても変わります。
実際に住む場所を探すときは、この平均値ではなく、住みたい地域の相場を個別に確認してください。ここで示した数字は、地域全体の水準を比べるための目安です。
関西のなかでも、条件は違う
関西3市を並べると、性格の違いが見えてきます。
大阪市は消費支出が最も低く、交通・通信費の安さが際立っています。一方で家賃地代は関西3市のなかでは高めです。
京都市は消費支出が3市のなかで最も高く、教育費も月1万4,210円と高めです。学生の多い街であることや、市街地が限られていることが影響していると考えられます。
神戸市は光熱・水道が月1万9,611円と最も安く、教育費も月9,928円と全国平均を下回ります。持家率が90%と高いのも特徴です。
こうした違いを踏まえると、関西で働く場合、勤務地と居住地を分けて考える余地があります。大阪の企業に勤めながら、兵庫県や奈良県に住むという選択は現実的です。関西は鉄道網が発達しているため、府県をまたいだ通勤が一般的だからです。
東京圏でも同じことは起きますが、関西の場合は移動距離が比較的短いという利点があります。通勤時間を大きく増やさずに、住居費を調整できる余地があるということです。
自分の場合は、どう考えるか
最後に、判断のしかたを整理しておきます。
まず、東京と関西を比べるなら、賃金の差と支出の差を両方見ることです。東京は賃金が高いぶん支出も高く、大阪は賃金が全国平均を上回りながら支出は低い。手元に残る金額という点では、大阪にも十分な合理性があります。
次に、自分の支出構造がどうなっているかを確認します。車を持たない生活ができるなら、関西の交通費の安さは効いてきます。逆に車が必要な地域に住むなら、この利点は小さくなります。
そして、子どもの教育を考える段階なら、大阪府の高校授業料無償化は大きな要素です。ただし中学受験や塾にどこまで関わるかで、実際の負担は変わります。
こうした比較をしたうえで、その条件で働ける仕事があるかどうかを確かめる段階になります。統計は地域全体の平均であって、あなた個人がいくら提示されるかは書かれていません。それを知るには、実際に求人を見て、応募して、条件を確認するしかありません。
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まとめ
大阪府の賃金は全国平均を上回る4都府県のひとつです。一方、大阪市の消費支出は月28万737円で、東京都区部より月7万230円、全国平均より月1万9,506円少なくなっています。
支出が少ない最大の理由は交通・通信費でした。大阪市は月3万1円で、全国平均より月1万1,587円安い。公共交通機関が発達しており、車を持たなくても生活できることが影響していると考えられます。光熱・水道も全国平均を下回っています。
教育費は月1万2,274円で全国平均並み。東京都区部より月8,927円安い水準です。加えて大阪府では2026年度から高校授業料が全学年で無償化されており、この点でも負担は軽くなっています。
家賃も、大阪市は月6万5,701円で全国平均並み。東京都の月9万4,802円より2万9,101円安い水準です。
東京が「多く稼いで多く使う」構造だとすれば、大阪は「そこそこ稼いで、あまり使わない」構造です。どちらが自分に合うかは、車の要否や教育方針、そして働く場所の選択肢をどう見るかで変わってきます。
よくある質問
Q. 大阪の平均年収は東京と比べてどうですか?
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、全国平均の賃金は月33万400円で、これを上回るのは東京都、神奈川県、愛知県、大阪府の4都府県のみです。大阪府はこの上位4府県に含まれます。最も高い東京都は月40万3,700円で全国平均を22%上回っており、大阪はそこまでの水準ではないものの、全国的には上位に位置しています。
Q. 大阪の生活費はいくらぐらいですか?
総務省の家計調査(2024年)によると、大阪市の二人以上の世帯の消費支出は月28万737円です。東京都区部の月35万967円より月7万230円少なく、全国平均の月30万243円と比べても月1万9,506円少なくなっています。京都市は月29万5,508円、神戸市は月28万207円です。
Q. 大阪の生活費が安いのはなぜですか?
最も大きいのは交通・通信費です。大阪市は月3万1円で、全国平均の月4万1,588円より1万1,587円安く、これは全費目のなかで最大の差です。地下鉄や私鉄の路線網が充実しており、車がなくても生活できる世帯が多いことが影響していると考えられます。光熱・水道も月2万1,488円と全国平均を下回っています。
Q. 関西の教育費は高いのですか?
家計調査の実額で見ると、大阪市の教育費は月1万2,274円で全国平均の月1万1,703円とほぼ同水準です。東京都区部の月2万1,201円と比べると月8,927円安くなっています。加えて大阪府では2026年度から高校授業料が全学年で完全無償化されており、所得制限もありません。ただし私立中学の学費や塾の費用は無償化の対象外です。
Q. 大阪で部屋を借りると家賃はいくらですか?
総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、大阪市の民営借家(専用住宅)の1か月あたり家賃は6万5,701円です。全国平均の6万5,496円とほぼ同水準で、東京都の9万4,802円より月2万9,101円安くなっています。神戸市は6万5,894円、京都市は6万3,759円、奈良県は5万7,664円です。
Q. 東京と関西、どちらで働くほうが手元に残りますか?
構造が異なります。東京は賃金が全国平均より月7万3,300円高い一方、消費支出も月5万724円多く、差し引きで月2万2,576円の余裕という形です。大阪は賃金が全国平均を上回りながら、消費支出は全国平均より月1万9,506円少ない。支出そのものを抑えられる点では大阪に分があります。車を持たない生活ができるかどうかで、この差はさらに変わります。
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Journal〈ジャーナル〉:キャリアメディア
出典
令和6年賃金構造基本統計調査(厚生労働省・2025年3月17日公表/10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所)
家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 年次2024年 第1-1表(総務省統計局・2025年2月7日公表/都市階級・地方・都道府県庁所在市別)
令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 第112-2表(総務省統計局・2024年9月25日公表/民営借家(専用住宅)の1か月当たり家賃)
大阪府の高校授業料が完全無償化 私立高校への影響は?(河合塾 Kei-Net Plus/大阪私立中学校高等学校連合会へのインタビュー)
