ゆるい職場なのに、なぜ不安なのか|「成長できない気がする」の正体と、辞める前にやること

働き方転職活動生き方・価値観
公開 2026.07.07更新 2026.08.19読了 8執筆・監修:Talentier編集部(鈴木真実)
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残業は少ない。
理不尽に叱られることもない。
上司も同僚も穏やかで、人間関係で消耗することもない。

それなのに、ふとした瞬間に「このままでいいのだろうか」という不安がよぎる。
恵まれているはずなのに、なぜか焦る。
しかもその焦りを、贅沢な悩みだと思って、誰にも言えずに抱えている。

もしそう感じているなら、それはあなたが弱いからでも、わがままだからでもありません。
近年、働きやすい職場ほど若手が不安を抱えて辞めていく、という一見矛盾した現象が広がっていて、その不安にはちゃんと名前と理由があります。

この記事では、その不安がどこから来るのかを解きほぐしたうえで、甘えとして片付けずに次の一歩へつなげる方法を、順番に見ていきます。

「ゆるい職場」で辞める若手が増えている

リクルートワークス研究所の古屋星斗氏は、働きやすくなったのに若手が辞めていく職場を「ゆるい職場」と名づけました。
かつての「きつい職場からの退職」とは反対に、居心地はいいのに「このままで成長できるのか」という不安から見切りをつける、という新しいタイプの離職です。

なぜ職場は「ゆるく」なったのか。
ここが誤解されやすいのですが、若者が弱くなったからではなく、職場の側が構造的に変わったからです。
背景にあるのは、この10年ほどで進んだ一連の法整備です。2015年の若者雇用促進法で残業時間や有給取得率、早期離職率の公表が求められるようになり、2019年の働き方改革関連法で労働時間の上限が規制され、2020年にはパワハラ防止法が大企業に施行されました。

その結果、若手の働き方は実際に変わりました。
リクルートワークス研究所の調査では、大手企業の入社1〜3年目の平均週労働時間は、2015年の44.2時間から2021年には43.0時間へと減少しています。
残業に当たる部分でみると、週4.2時間から週3.0時間へと、短期間で約3割も減った計算です。
これは個人の努力ではなく法律による変化なので、簡単には元に戻りません。

働きやすくなったなら、離職は減りそうなものです。ところが現実は逆でした。
新卒で入った人の3年未満の離職率は、3割程度で高止まりを続けています。そして古屋氏は、この状況について「成長意欲の高い人材こそが早く見切りをつける」と指摘しています。
やる気のない人ではなく、むしろ意欲のある人ほど、ゆるさに耐えられず出ていく。ここに、この問題のやっかいさが表れています。

大手企業の入社1〜3年目のうち、自分の職場を「ゆるい」と感じている人は約36%。決して珍しい感覚ではありません。

その不安の正体は「キャリア安全性」の欠如

では、居心地がいいはずの職場で、なぜ不安になるのか。
古屋氏の研究は、若手が安心して働ける職場には2つの異なる要素が必要だと示しています。

一つは、心理的安全性です。
何かを言っても頭ごなしに否定されない、人格を否定されない、という安心感のこと。
ゆるい職場は、この点はむしろ満たされていることが多いといえます。

もう一つが、キャリア安全性です。
これは「このまま今の会社で働いていれば成長できる」
「自分は別の会社や部署でも通用する人材だ」
と思えるかどうか、という感覚です。ゆるい職場で若手が抱える不安は、まさにこのキャリア安全性が満たされないことから生まれます。

数字にも表れています。
調査では、職場を「ゆるい」と感じている人の62.6%が「このまま所属する会社の仕事をしていても成長できないと感じる」と答えています。
また、入社1〜3年目の48.9%が「別の会社や部署で通用しなくなる」という不安を抱えていました。

ここで見落としてはいけないのが、「不満」と「不安」は別物だということです。
不満は、たとえば給料や人間関係への不平で、友人や同僚に愚痴をこぼせば、一時的にでも晴れます。
ところが不安は、飲みに行って発散しても消えません。むしろ職場が快適だと、辞める決定的な理由が見当たらないぶん、不安だけが行き場を失ってくすぶり続けます。
「特に不満はない。でも、このままでいいとは思えない」という状態は、この不満と不安のねじれから生まれています。

成長を分けるのは「量」ではなく「質」

ゆるい職場の不安を考えるうえで、大事な誤解を一つ解いておきます。
「ゆるい=ラク=成長できない」という思い込みです。

古屋氏の研究によれば、成長の実感は、仕事の「量」、つまり労働時間の長さとはあまり関係がありません。
長く働けば成長するわけではない、ということです。成長実感と結びついているのは、仕事の「質」でした。

ここでいう質とは、難しさのことです。
昨日より少しだけ難易度が高い、新しく覚えることがある、少し背伸びが必要になる。そうした質的な負荷があるときに、人は成長を実感します。

つまり正確に言えば、「ゆるい職場だから成長できない」のではなく、「質的な負荷が低い職場だから成長を実感しにくい」のです。
この違いは、自分の状況を判断するうえで重要な物差しになります。

自分の職場は、「量」だけがゆるいのか、それとも「質」までゆるいのか。残業が少なく時間に余裕があるだけで、手を伸ばせば挑戦的な仕事を取りに行ける環境なら、それはむしろ恵まれています。空いた時間を、成長のために使えるからです。
一方で、任される仕事の難易度が頭打ちで、何年いても同じことの繰り返しになりそうなら、質のゆるさに手を打つ必要があります。
まずは、自分の不安がどちらから来ているのかを見極めてみてください。

会社に育ててもらう時代は、もう終わっている

ゆるい職場が広がったことで、実はもっと根本的な変化が起きています。
それは、「育てる主語」が入れ替わったことです。

かつては、会社が若者を育てる、上司が部下を鍛える、というのが当たり前でした。大きな会社に入れば、あとは会社がキャリアの面倒を見てくれる、という感覚です。
実際、いまの大手企業の新入社員のうち、定年までその会社にいるイメージを持っている人は、2割程度にすぎないという調査もあります。
終身雇用を前提にできない以上、会社に育成を丸ごと委ねる前提そのものが崩れています。

これからは、「若者が会社を使って育つ」という発想に切り替える必要があります。
そして皮肉なことに、ゆるい職場は、この自律的な成長にとって好都合な面もあります。
時間に余白があり、理不尽な拘束が少ないぶん、自分の意思で動ける自由度が高いからです。要は、使い方次第です。

たとえば、こんな動き方が考えられます。
任される仕事を待つのではなく、少し難しい仕事や新しい役割に自分から手を挙げて、質的な負荷を意図的に取りに行く。
社内公募制度や他部署への異動、留学・出向制度といった、会社に用意されているリソースを積極的に使い倒す。あるいは、別の部署で伸びている同期に「どんな仕事を任され、どう育てられているのか」を具体的に聞き、それを持って上司に「自分もこういう経験を積みたい」と相談してみる。

実際に、こうして上司に直訴した若手が「よく言ってくれた」と感謝され、任される仕事が変わったという例もあります。
残業が減って空いた時間を、社外の学びや副業、興味のある活動に投資するのも、立派な自己投資です。

大切なのは、「育ててもらえない」と嘆いて受け身になるのではなく、環境を使い倒す側に回ることです。

「辞める・残る」を決める前に、現在地を測る

とはいえ、不安が消えないと「とにかく辞めれば変わるはずだ」と考えたくなります。ただ、勢いだけで辞めるのは早計です。
次の職場が今より質的に高い環境だとは限りませんし、環境を使いこなす姿勢がないままでは、どこへ行っても同じ不安を繰り返しかねません。

まずやるべきは、今の環境で質的負荷を上げられないかを試すこと。そのうえで、辞めるにせよ残るにせよ必要になるのが、自分の現在地を測ることです。
ここには2つの視点があります。

一つは、今の自分が外からどう見えるかを知ることです。
ゆるい職場は、大きな成果や修羅場の経験が積みにくいぶん、自分が何を積み上げてきたのかを実感しづらいという側面があります。だからこそ、これまでの経験を、社内の感覚ではなく採用の目線で言語化しておく価値があります。

ここで使えるのが、AIで履歴書・職務経歴書を作成できるTalentier Pathです。
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もう一つは、自分がどんな環境で伸びるタイプなのかを知ることです。
安定した環境でこそ力を出せる人もいれば、負荷や変化がある方が伸びる人もいて、これは人によって違います。

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市場での見え方と、自分の伸び方。
この2つが分かって初めて、「今の環境で負荷を上げる」のか「環境を変える」のかを、感情ではなく根拠で選べるようになります。

まとめ|「本決め」ではなく「仮決め」でいい

ゆるい職場で感じる不安は、時代の構造から生まれるものであって、あなたの弱さではありません。最後に要点を振り返ります。

・職場が「ゆるく」なったのは法整備による構造的な変化で、元には戻らない
・不安の正体は、居心地の良さ(心理的安全性)はあっても、成長や通用性の実感(キャリア安全性)が満たされないこと
・成長を左右するのは労働時間の「量」ではなく、仕事の「質」
・会社に育ててもらう時代は終わり、環境を使い倒して自分で育つ姿勢が要る
・辞めるにせよ残るにせよ、まず市場での見え方と自分の伸び方という現在地を測る

古屋氏は、これからの時代に必要なのは「本決め」ではなく「仮決め」だと言います。
完璧な答えを出してから動くのではなく、仮に方向を決めて動いてみて、違えばまた決め直せばいい、という考え方です。

不安を感じること自体は、悪いことではありません。それは、次の段階へ進む前の準備運動のようなものです。
焦って辞める必要はありませんが、受け身のまま留まり続けるのも危険です。その第一歩として、まずは自分の現在地を測るところから始めてみてください。

リンク・出典

Talentier Path(AIで履歴書・職務経歴書を作成/完全無料)
https://talentier.jp/path

Talentier Insight(メンタルタイプ診断)
https://talentier.jp/insight

リクルートワークス研究所「大手企業における若手育成状況検証調査」(2022年)/「全国就業実態パネル調査」(発表元:リクルートワークス研究所)
リクルートワークス研究所 機関誌Works「『職場運営法改革』による『ゆるい職場』が加速させる『成長できない』という不安」
・古屋星斗『ゆるい職場ー若者の不安の知られざる理由』(中央公論新社・2022年)

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