「叱れない上司」と「導いてほしい部下」のすれ違いをデータで読み解く

2026.07.23カテゴリ:書類の書き方読了 13
文字サイズ

「指示は曖昧なのに、主体的に動けと言われる」
「相談しても変わらないし、そもそも話しかけにくい」

上司との関係にこんなモヤモヤを抱えている人は、少なくないと思います。飲み会の愚痴の定番でもあり、転職理由の定番でもあります。

ただ、このすれ違いをデータで見てみると、少し意外な景色が見えてきます。
上司は余裕の立場からあなたを評価しているのではなく、実はあなた以上に、あなたとの関わり方に悩んでいる。しかも、お互いが望んでいるものは、驚くほど近い。

この記事では、Job総研が2026年5月に実施した「2026年 上司と部下の意識調査」(全国の20〜50代の社会人421人・部下の立場での回答387人・上司の立場での回答136人)をもとに、上司と部下のすれ違いの正体を解剖します。
そのうえで、部下の側からできる「上司の動かし方」まで踏み込みます。我慢でも、諦めでもない、3つ目の選択肢の話です。

困っているのは、実は上司の方だった

まず、この調査でいちばん意外な数字から紹介します。

上司との関わりで「困っている」と答えた部下は62.3%。内訳は「とても困っている」14.0%、「困っている」20.7%、「どちらかといえば困っている」27.6%で、部下の6割超が何かしらの困りごとを抱えています。

では上司側はどうか。
部下との関わりで「困っている」と答えた上司は69.9%。内訳は「とても困っている」14.0%、「困っている」20.6%、「どちらかといえば困っている」35.3%です。

この調査が行われたのは2026年5月中旬。2026年卒の新入社員が入社して2ヶ月が経ち、現場で上司と部下の距離感が本格的に問われ始めるタイミングです。その時期に取られた数字として見ると、なおさら実感がこもっています。

「困っている」と答えた割合は、部下の62.3%より上司の69.9%の方が高い。つまり数字の上では、上司の方が困っています。

部下の側から見ると、上司は評価する側であり、指示を出す側であり、余裕のある立場に見えます。だからこそ「悩んでいるのはこちらだけ」と感じやすいのですが、実際には机の向こう側でも、同じくらい、いやそれ以上に頭を抱えている人がいる。
この前提がひっくり返るだけで、上司との関係の見え方は変わってきます。相手は「分かっていて放置している人」ではなく、「どうしていいか分からず慎重になっている人」かもしれないのです。

すれ違いの正体は、同じ現象の裏表

では、お互いに何に困っているのでしょうか。困りごとの中身を並べると、このすれ違いの構造がはっきり見えます。

困りごとがあると答えた部下241人の内訳は、次の通りです。

  • 指示が曖昧:43.2%

  • 相談しても改善されない:32.4%

  • 話しかけにくい:31.5%

一方、困りごとがあると答えた上司95人の内訳はこうです。

  • 主体性を感じにくい:46.3%

  • 指示待ちが多い:45.3%

  • 注意・指摘がしにくい:40.0%

見比べてみてください。部下の1位「指示が曖昧」と、上司の1位「主体性を感じにくい」・2位「指示待ちが多い」は、実は同じ現象を反対側から見ています。

上司が「自分で考えてほしい」と指示を粗くすればするほど、部下は「どこまでやっていいか分からない」と動けなくなる。動けない部下を見て、上司はさらに「主体性がない」と感じる。

この悪循環が、すれ違いの正体です。

調査の自由記述には、この構造がそのまま表れています。上司側のコメントには「指示されるまで動かない部下に自分から伝えてしまうと、成長に繋がらないように思い言えない」とあります。つまり、指示が曖昧なのは意地悪でも怠慢でもなく、「言いすぎたら考えなくなる」という育成上の遠慮であるケースがあるのです。
一方、部下側のコメントは「自分の担当範囲や求められているレベルが分かりづらく不安になる」。遠慮の結果として生まれた曖昧さが、部下には不安として届いている。どちらも悪意はないのに、行動がすれ違う。よくできた、しかし厄介な構造です。

なぜ上司は「言わなくなった」のか

このすれ違いの背景には、時代の変化があります。

Job総研が2023年に公開した同種の調査では、上司の6割が「部下を叱った経験がない」と回答しています。さらに2024年の調査では「9割が部下に忖度」という結果も報告されました。かつての「背中を見て学べ」「厳しく言って育てる」というマネジメントは、すでに多数派ではありません。むしろ今の標準は、言葉を選び、様子をうかがい、踏み込むことをためらうマネジメントです。

今回の自由記述にも、上司のこんな本音があります。
「もっと厳しく指導したいが、パワハラに繋がるかもしれないので言えない。距離感も難しい」

ハラスメントへの意識が高まったこと自体は、明確に良い変化です。理不尽な叱責で人が潰れる職場は減っていくべきです。ただその副作用として、「何をどこまで言っていいか分からない」上司が増え、指導や期待の伝達そのものが減ってしまった。注意・指摘がしにくいと答えた上司が40.0%いることが、それを裏付けています。

そして部下の側も、察することを求めるコミュニケーションを拒否し始めています。
上司から言われたくない言葉を聞いた設問では、1位が「言わなくても分かるでしょ」で46.8%。2位は「なんでできなかったの?」42.4%、3位は「やる気あるの?」38.2%でした。

上位に並んだのはどれも、具体的な情報がゼロのまま、感情と察しだけを要求する言葉です。

「言わなくても分かるでしょ」が最も嫌われる言葉になった時代に、「言わない指導」が機能するはずがありません。上司は言えなくなり、部下は察しを拒み、間に沈黙だけが残る。すれ違いが起きるのは、ある意味で必然の環境になっているのです。

実は、望んでいるものはほぼ同じだった

ここまでを読むと、上司と部下は分かり合えない存在に見えるかもしれません。ところが、この調査で最も希望が持てるのは、ここからのデータです。

「上司の主な役割は何だと思うか」を両者に聞いた結果を見てみます。

  • 部下の回答:1位「安心できる職場環境の整備」64.9%、2位「トラブル時の責任をとる」57.6%、3位「部下の育成」55.8%

  • 上司の回答:1位「部下の育成」66.9%、2位「安心できる職場環境の整備」58.1%、3位「トラブル時の責任をとる」50.7%

順位こそ入れ替わりますが、顔ぶれは完全に同じです。安心できる環境、責任、育成。上司と部下は、上司という役割に対してほぼ同じものを期待しています。

部下が上司に求めることの上位は「心理的安全性」46.8%、「チームマネジメント力」44.2%、「傾聴姿勢」43.2%。管理や統制ではなく、支援と対話です。
そして上司が嬉しかった部下の言動の1位は「自発的な動き」50.0%、2位は「感謝を伝えられた」41.9%、3位は「成長した姿を見せてくれた」39.0%。部下が嬉しかった上司の言動も「努力・結果が認められた」43.4%、「感謝を伝えられた」40.3%、「相談に乗ってくれた」31.3%と、認めることと感謝が双方の上位に並びます。

注目したいのは、「感謝を伝えられた」が上司側でも部下側でも2位に入っている点です。役職も年齢も関係なく、人は自分の働きかけが届いたと分かる瞬間を求めています。逆に言えば、感謝をきちんと言葉にするだけで、双方にとって2番目に嬉しいことを、コストゼロで実行できるということでもあります。

関係が壊れているのではありません。お互いに良い関係を望みながら、その作り方の正解が分からず、様子を見合っているのです。

調査元もこの状態を「関係性の悪さというより、正解が分からず慎重になっている状態」と分析しています。冷え切った関係と、慎重になりすぎている関係。見た目は似ていますが、打てる手はまったく違います。後者なら、どちらかが一歩動けば変わる余地が大きいということです。

しかも「知りたいこと」は、噛み合っている

もう一つ、面白いデータがあります。お互いに「相手について知りたいこと」を聞いた設問です。

部下が上司とのコミュニケーションで知りたいことの上位は、こうでした。

  • 自分に期待していること:38.0%

  • 上司が望む報連相のレベル:35.9%

  • 理想的な距離感:30.0%

上司が部下について知りたいことの上位は、こうです。

  • 理想の指導の仕方:48.5%

  • 理想的な距離感:36.0%

  • 注意や指摘の受け止め方:33.8%

これ、よく見ると会話が成立する組み合わせになっています。
部下は「何を期待されているか」「どの粒度で報告すべきか」を知りたい。それはまさに、上司が伝えるべき情報です。そして上司は「どう指導してほしいか」「指摘をどう受け止めるか」を知りたい。それはまさに、部下しか答えられない情報です。
しかも「理想的な距離感」は、部下30.0%・上司36.0%と、双方の上位に共通して入っています。近づきすぎても離れすぎてもいけない距離を、お互いが相手に合わせて探っている状態です。

お互いが、相手の持っている答えを欲しがっている。つまり、聞けば答えたい人が、机の向こう側に座っています。

それでも会話が始まらないのは、「聞いていいのか分からない」「切り出し方が分からない」からです。部下の困りごと3位が「話しかけにくい」31.5%だったことを思い出してください。必要なのは関係の修復ではなく、最初の一往復のきっかけなのです。

若手ができる「上司の動かし方」

とはいえ、「上司側がマネジメントを変えるべきだ」という正論を唱えても、明日の自分は楽になりません。ここからは、部下の側から状況を動かす方法を考えます。上司を変えるのではなく、上司から必要な情報を引き出し、自分が動きやすい環境を自分で作る、という発想です。

やることはシンプルで、先ほどの「知りたいこと」のデータをそのまま使います。

第一に、期待値を自分から取りに行くことです。上司の指示が曖昧なら、曖昧なまま抱えずに、判断基準を具体的に聞いてしまいます。

  • 「この仕事は、どこまで自分の判断で進めて良いですか」

  • 「完成イメージに近い過去の例があれば教えてください」

  • 「報連相は、どのタイミング・どの粒度が良いですか」

聞くことは無能の証明ではありません。部下の35.9%が報連相のレベルを知りたがっている一方で、それを明文化してくれる上司は多くない。だったら聞いた方が早いですし、実は上司側も、何をどう伝えるべきか迷っています。質問は、上司にとって「伝えて良いことが確定する」ありがたい機会でもあるのです。

聞き方のコツは、丸投げの質問ではなく、自分の理解を先に置いてから確認する形にすることです。

  • NG例:「これ、どうすればいいですか」

  • OK例:「ゴールはAという理解で進めていますが、合っていますか。判断に迷ったらBの基準で決めて良いですか」

前者は上司に思考を丸ごと返す質問で、まさに「指示待ち」の印象を強めます。後者は自分の解釈を示した上での確認なので、同じ「聞く」でも主体性の表明として届きます。1on1や評価面談の場がある会社なら、そのタイミングで期待値と報連相の粒度をまとめて確認し、以降は差分だけ聞くようにすると、日常の「話しかけにくさ」も減っていきます。

第二に、上司の「知りたい」に先に答えを渡すことです。上司の48.5%は理想の指導の仕方を、33.8%は指摘の受け止め方を知りたがっています。つまり「自分はこう言ってもらえると動きやすいです」「気になる点は率直に指摘してもらって大丈夫です」と先に伝えるだけで、上司の最大の悩みを一つ解消できます。注意・指摘がしにくいと感じている上司が40.0%いる以上、「指摘OK」の表明は想像以上に効きます。

第三に、限界の申告を遠慮しないことです。自由記述で上司はこう書いています。「自分で抱えていることがキャパオーバーになる時は、迷惑と思わずにすぐに伝えてほしい」。抱え込みは責任感の表れのつもりでも、上司からは状況が見えなくなるだけです。申告は迷惑ではなく、上司が明確に望んでいる行動です。

そしてこれらの対話には、土台があると格段にやりやすくなります。自分がいま何を担当し、何ができて、どんな実績があるのか。これが言語化されていると、「ここまでは任せてほしい」「ここは判断基準が欲しい」という交渉が具体的になります。
Talentier Pathは転職用の職務経歴書を作るサービスですが、経歴を箇条書きで入れるとAIが職務の一覧として整理してくれるので、上司との期待値のすり合わせや評価面談に持ち込む「自分の現在地資料」づくりにも使えます。完全無料なので、転職の予定がなくても、一度自分の担当と実績を棚卸ししておく価値はあります。

あわせて、自分がそもそも上司に何を求めるタイプなのかを知っておくのも有効です。メンタルタイプ診断では主体性や承認欲求などの8軸で自分の傾向が分かるので、「自分は細かい確認が欲しいタイプなのか、任せてほしいタイプなのか」を言語化する手がかりになります。

それでも埋まらないギャップは、ある

最後に、正直な話もしておきます。すり合わせで埋まるのは、期待値と情報のギャップです。一方でこの調査には、もっと深い層のギャップも表れています。

上司が部下との間で感じているギャップの上位は「仕事への熱量」44.9%、「主体性・自発性」41.2%。部下が感じているギャップは「成果に対する意識」26.1%、「仕事への熱量」25.1%、「はたらき方に対する価値観」24.8%です。

数字をよく見ると、ここにも非対称があります。上司側は4割台のギャップを感じているのに、部下側の最多は26.1%。ギャップを強く感じているのは、どちらかといえば上司の側です。部下にとっては普通に働いているだけでも、上司の目には熱量の差として映っている可能性がある。この温度差の存在自体を知っておくことは、上司の言動を解釈するうえで役に立ちます。

熱量や働き方の価値観は、対話でチューニングできる部分もありますが、根っこは人生観に近いものです。ここが決定的に合わない相手と、無理に同じ温度になる必要はありません。

期待値のすれ違いは対話で埋められます。しかし価値観そのものの不一致まで、あなたが一人で背負う必要はありません。

すり合わせを試みても状況が変わらない、あるいは上司個人ではなく組織の文化として合わない。そう判断したなら、環境を変えることは逃げではなく選択です。
そしてその時、「期待値の確認や報連相のすり合わせを自分から試みた」という事実は、転職の面接で効いてきます。「上司と合わなかった」だけでは他責に聞こえますが、「認識を揃える働きかけをした上で、価値観の方向性が違うと判断した」と語れる人は、次の職場でも関係を作れる人だと評価されるからです。

まとめ

Job総研の調査から見えた上司と部下の実像を、整理してきました。

困っているのは部下の62.3%だけでなく、上司は69.9%とそれ以上。
すれ違いの正体は「指示が曖昧」と「主体性がない」という同じ現象の裏表で、背景には叱れない時代のマネジメントの萎縮があります。
それでも、双方が望むものはほぼ同じで、知りたいことは噛み合っている。足りないのは関係の修復ではなく、期待値を言葉にする最初の一往復でした。

上司へのモヤモヤは、我慢するか転職するかの二択ではありません。期待値を取りに行き、受け止め方を先に渡し、限界を申告する。部下の側から動かせる余地は、データが示す通り、思っているより大きいはずです。
そして動いた上でダメなら、その経験ごと持って、次の環境を選べばいいのです。

よくある質問

Q. 指示が曖昧な上司には、どう対応すればいいですか?

曖昧なまま推測で進めず、判断基準を具体的に聞くのが近道です。「どこまで自分の判断で進めて良いか」「完成イメージに近い例はあるか」「報連相はどの粒度が良いか」の3点を確認すると、多くの曖昧さは解消します。調査でも部下の43.2%が指示の曖昧さに困っており、聞くこと自体はまったく特別な行動ではありません。

Q. 上司に「自分への期待」を聞くのは失礼になりませんか?

なりません。調査では部下の38.0%が「自分に期待していること」を知りたいと答えている一方、上司の48.5%も「理想の指導の仕方」を知りたがっています。つまり期待値の確認は、上司にとっても伝える機会になる歓迎されやすい質問です。評価面談や1on1のタイミングなら、さらに自然に切り出せます。

Q. 上司と合わないことは、転職理由になりますか?

なりますが、伝え方の設計が必要です。「上司と合わなかった」だけでは他責な印象を与えやすいため、期待値の確認や報連相のすり合わせなど、自分から働きかけた事実とセットで語るのが基本です。そのうえで「チームで認識を揃えながら働ける環境を求めている」と、次に求めるものへ言い換えると説得力が出ます。

Q. 1on1や面談で、上司に何を確認すればいいですか?

まず確認したいのは「自分への期待」「報連相の望ましい粒度」「自分の判断で進めて良い範囲」の3つです。調査で部下が知りたいことの上位に挙がった項目であり、日常業務の曖昧さの多くはここから生まれます。あわせて「指摘は率直にもらって大丈夫です」と受け止め方を伝えておくと、上司側の遠慮も減り、以降のコミュニケーションが楽になります。

Q. 上司も部下との関係に悩んでいるというのは本当ですか?

本当です。Job総研の2026年調査では、部下との関わりに困っている上司は69.9%と、部下側の62.3%を上回りました。「主体性を感じにくい」「指示待ちが多い」「注意・指摘がしにくい」が上位で、パワハラへの懸念から言いたいことを言えずにいる上司の本音も自由記述に表れています。

関連サービス

出典

READ, THEN ACT — 読むだけで終わらせない

あなたのキャリアの、続きを。

STEP 01

自分を、診断する。

15分の診断で、強みと価値観を可視化。

無料で診断する →
STEP 02

書類を、つくる。

AIとの対話だけで履歴書・職務経歴書が完成。

無料でつくる →
STEP 03

求人を、さがす。

あなたに合う求人へ。書類はそのまま応募に。

求人を見る →

RELATED関連記事