帰属意識が変化する時代、転職市場での「見られ方」

2026.06.18カテゴリ:転職活動・働き方・時事ニュース・生き方・価値観・書類の書き方・面接対策読了 8
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『今の会社のこと、正直そこまで好きでも嫌いでもない』

『給料分はきちんと働くけれど、この先ずっとここにいたいかと聞かれると、よくわからない』

そんな感覚を持っている方は、少なくないと思います。

少し前なら、こうした距離感は「やる気がない」と見られがちでした。
けれど今は、会社との距離の取り方そのものが、世代全体で静かに変わってきています。
あなた一人が冷めているわけではありません。

この記事は、会社への愛着を持つべきだと説くものでも、その逆でもありません。
会社との距離感が変わったこと自体は自然な流れだと捉えたうえで、では転職という場面で、その距離感はどう見られているのか。
そして、自分の働き方をどう言葉にしておけばいいのか。
整理していきましょう。

そもそも「帰属意識」とは何か

最初に、言葉を少しだけ整理させてください。

帰属意識とは、自分が所属する会社や組織への愛着、ここの一員だという所属感のことを指します。
これとよく混同されるのが、ワークエンゲージメントという言葉です。こちらは、仕事そのものを通じて得られる前向きな心理状態、つまり目の前の仕事にやりがいや手応えを感じているかどうかを指します。

この2つは、似ているようで別物です。

会社にそれほど愛着がなくても、担当している仕事には前向きに取り組めている、という状態は十分にありえます。
逆に、仕事の内容には不満があるけれど、会社という場所には居心地のよさを感じている、という人もいます。

ここを分けて考えておくと、後の話がぶれません。
これから扱うのは主に前者、つまり「会社という組織への愛着」のほうです。
仕事が嫌いという話ではなく、会社との心理的な距離が、どう変わってきたかという話だと思って読み進めてください。

なぜ、会社との距離が変わったのか

会社への帰属意識が薄れてきた背景には、大きく2つの要因が重なっていると考えられます。
世代的な価値観の変化と、コロナ禍による組織への入り方の変化です。

順番に見ていきます。

ひとつめは、世代的な価値観の変化です。
若い世代ほど、会社を生活の中心に置かない傾向は、データにもはっきり表れています。

ALL DIFFERENTが2025年度の新入社員3,933人に行った調査では、今後3年間で「定時に帰りたい」と答えた人が約半数にのぼり、その割合は11年前より15ポイント以上高くなっていました。
「プライベート優先」と答えた割合は11年前の4倍以上に増え、仕事で成し遂げたいことは「安定した生活」が過去最高、「自分の成長」が過去最低でした。
会社のために頑張ることより、自分の生活や安定を大事にする。その重心の移動が、数字に出ています。

似た傾向は、別の調査でも確認できます。

リクルートマネジメントソリューションズの新入社員意識調査2025では、「今の会社で勤め続けることにこだわらない」が計49.5%で、「定年まで現在の会社で勤めたい」の計42.7%をやや上回りました。
一社に骨を埋めるという前提が、もはや当たり前ではなくなっているということです。

ふたつめが、コロナ禍による組織への入り方の変化です。
職場の空気、同僚との何気ない会話、先輩の仕事ぶりを間近で見る機会。
会社への愛着が自然に育っていく土台は、こうした日常の積み重ねの中にあります。

ところが、その土台が入社直後から薄かった世代がいます。
リクルートマネジメントソリューションズの調査によれば、2020年入社の約8割が1年目にテレワークを経験していました。会社という場所に体ごと馴染む前に、画面越しの働き方から社会人生活が始まった世代です。

この影響は、その後の数字にも表れています。

アジャイルHRと東京大学が全国1万人を対象に行った調査では、コロナ後に多くの年代でエンゲージメントが回復していく中、20歳代以下だけは組織への帰属意識と、今の会社で働き続けたいという意欲が、はっきりと低下していました。

世代的な価値観の変化に、コロナという入り口のつまずきが重なった。
会社との距離が広がったのは、どちらか一方ではなく、この両方が同時に効いた結果だと見るのが自然です。
だからこそ、これは個人の心がけの問題ではなく、時代の側で起きている変化だと言えます。

愛着が濃い人、薄い人。それぞれの強みと弱点

会社への帰属意識には、濃い人と薄い人がいます。
どちらが優れているという話ではありません。
それぞれに向いている場面と、気をつけたい点があるだけです。

帰属意識が濃い人は、ひとつの場所に腰を据えて関わる中で、社内の信頼や人脈を積み上げやすいという強みがあります。
長く見てもらえる分、責任のある仕事を任されやすく、腰を据えた成果を出しやすい。
一方で、その会社の論理に染まりすぎると視野が狭くなったり、合わない環境でも離れる決断が遅れて、必要以上にしがみついてしまうことがあります。

帰属意識が薄い人は、環境を変える決断がしやすく、機動的に動けるのが強みです。
会社に依存しない自律的なキャリアを描きやすいとも言えます。

実際、ビズリーチが2020年に行った調査では、コロナをきっかけに約6割の人がキャリア観を変え、そのうち9割以上が「企業に依存しないキャリア形成が必要」と答えていました。
少し前の数字ですが、その後の流れを先取りした結果だったと言えます。
ただ、一か所での信頼の蓄積はしにくく、根を張る前に動くと「腰が落ち着かない人」と見られてしまうリスクもあります。

どちらのタイプにも、強みと弱点がありますが、大切なのは、自分の傾向を知っておくことです。
なお、付け加えておくと、帰属意識が薄いことは「協調性がない」とは別の話です。
先ほどのリクルートマネジメントソリューションズの調査でも、今の若手は自己への意識が高まっている一方で、周囲と助け合う共創型のチームワークを志向していると指摘されています。
会社に染まらないことと、人と協力できないことは、まったく違います。

採用の場で、企業は何を見ているのか

ここで、転職という場面に目を向けてみます。

会社への愛着や志望度が採用で見られていないかというと、そんなことはありません。
むしろ多くの企業は、自社のことをどれだけ理解してくれているか、入社後に定着して活躍してくれそうかを、しっかり測ろうとします。

加えて、これまでどう行動して成果を出してきたかという行動特性、いわゆるコンピテンシーも重視されます。
企業が見ているのは、ひとつの要素ではなく、こうした複数の側面を合わせた全体像です。

ただ、ここで気をつけたいことがあります。
企業は「どれだけ会社を好きか」という気持ちの強さそのものを測っているわけではない、ということです。

志望度の高さも、定着して活躍してくれそうかも、結局は応募者の行動や成果という事実から読み取られます。
「御社が第一志望です」と言葉で訴えるより、企業研究にもとづいた具体的な話や、これまで一つひとつの仕事にどう向き合ってきたかのほうが、ずっと説得力を持ちます。

早期離職そのものが珍しくなくなった今、企業は「せっかく採用しても、すぐに離れてしまうのではないか」という不安を、以前より強く持つようになっています。
だからこそ、応募者がこれまでの職場でどう振る舞ってきたかを、慎重に読み取ろうとします。

実際に書類を見ていると、ここで損をしている人がよくいます。
会社への思いや姿勢ばかりが言葉で並んでいて、その人が何をして何を残したのかが見えてこない。気持ちは伝えようとしているのに、肝心の事実が添えられていないのです。

「会社への忠誠」と「市場で評価されるコミット」は別物

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

志望度や自社理解が見られるとはいえ、それと「一社にどれだけ長く尽くしてきたか」は分けて考えることができます。

一社に長くいたかどうか、その会社が好きだったかどうかは、転職市場での評価を決める本質ではありません。
それよりも、在籍した期間に何に取り組み、何を変え、どんな結果を出したのか。その一貫性のほうが、ずっと雄弁に語ってくれます。

これは、帰属意識が薄い人にとってはむしろ朗報です。
会社を愛していなくても、一つひとつの仕事にきちんと向き合い、成果を出してきたのなら、それは立派な実績です。
複数の環境でそれぞれ結果を出してきたという見せ方は、適応力の証として強みにもなります。

帰属意識が濃い人も同じです。
長くいたこと自体が評価されるのではなく、その時間の中で積み上げた具体的な成果が評価されます。「ずっといました」ではなく「この期間にこれをやり遂げました」と言えるかどうかが分かれ目です。

そして、応募先への志望度や自社理解を伝えるときも、同じことが言えます。
気持ちを言葉で盛るのではなく、これまで関わった場所でどうコミットして何を出してきたかという事実を語る。その積み重ねが、結果として「この人なら入っても根を張ってくれそうだ」という信頼につながっていきます。

その一貫性を、事実として残しておく

では、その「コミットして成果を出してきた」という事実を、どう見せればいいのでしょうか。

ポイントは、感情ではなく事実で語ることです。「会社が好きだった」「精一杯やってきた」という気持ちの言葉だけでは、採用の場ではなかなか伝わりません。

代わりに必要なのは、「この期間に、この課題に取り組み、こういう結果を出した」という、具体的な事実と数字です。
志望動機を語るときも、自社理解の深さを示すときも、土台になるのはこの事実です。

とはいえ、自分の経験を事実ベースで言語化するのは、思った以上に難しい作業です。
日々の仕事は当たり前になってしまっていて、何が成果だったのかを自分では言い当てにくいからです。

そこで役に立つのが、Talentier Pathです。
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会社にどれだけ長くいたか、何回転職したかではなく、関わった場所で何にコミットして、何を残したか。そこを起点に書類を組み立てると、帰属意識の濃淡や在籍期間の長短に関係なく、評価される形に整っていきます。

会社との距離は、人それぞれでいい

会社との距離の取り方は、人それぞれで構いません。
深く根を張りたい人もいれば、軽やかに動きたい人もいる。

変わったのは時代のほうであって、あなたの感覚がおかしいわけではありません。

ただ、自分がこれまでどこで、何にコミットして、何を残してきたのか。
それは一度、言葉にしておく価値があります。

会社を好きだったかどうかとは関係なく、それはあなた自身が歩んできた事実だからです。
その事実さえ手元にあれば、次にどんな距離感で働く場所を選ぶとしても、きっと役に立ちます。


出典:新入社員意識調査2025(ALL DIFFERENT株式会社・2025年6月発表)
出典:新入社員意識調査2025(リクルートマネジメントソリューションズ)
出典:リモート前後の新入社員に聞く、入社1年目オンボーディング実態調査(リクルートマネジメントソリューションズ・2021年)
出典:コロナ後の従業員エンゲージメント 第2回全国調査(アジャイルHR・東京大学共同研究・2024年)
出典:新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけとしたキャリア観に関する調査(ビズリーチ・2020年5月)

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