「リファレンスチェックをします」と言われて、身構えていませんか
・選考が順調に進んで、あと一歩というところで「リファレンスチェックをさせてください」と言われる。
・前の職場の人に自分のことを聞かれるのかと、急に落ち着かない気持ちになる。
そんな経験をした方や、これから経験しそうで不安な方は少なくありません。
「何を話されるんだろう」
「今の会社に転職活動が知られてしまわないか」
そう感じるのは自然なことです。
ただ、実際の仕組みを知ると、身構えるほどのものではないと分かってきます。
この記事では、そもそもリファレンスチェックとは何かというところから、どれくらい広がっているのか、何を見られるのか、そして「勝手に前職にバレる」という不安が誤解であることまで、落ち着いて整理していきます。受けると決まったときに何をしておけばよいかも、順番に見ていきましょう。
そもそも、リファレンスチェックとは
リファレンスチェックとは、応募者と一緒に働いた人に、その人の仕事ぶりや人物像を尋ねる手続きのことです。
「リファレンス(reference)」は「推薦・照会」という意味で、「前職照会」と呼ばれることもあります。まだ広く知られた言葉ではないので、まずここから整理します。
尋ねる相手になるのは、たとえば前職や現職の上司・同僚・部下など、その人と実際に一緒に働いた経験のある人です。この回答する人を「回答者」や「推薦者」と呼びます。書類や面接だけでは見えにくい、実際の働き方やチームでの振る舞いを、第三者の視点から確かめるのが狙いです。
行われるタイミングは企業によって違いますが、内定の前後に「本当に採用して問題ないか」を最終確認する目的で実施されることが多いとされています。応募の早い段階で急に行われるものではありません。
似た言葉に「バックグラウンドチェック」がありますが、これは学歴・職歴の真偽や、場合によっては犯罪歴などを確認する身元調査を指すことが多く、少し性質が違います。リファレンスチェックのほうは、事実の裏取りというより「評価・人となり」に焦点が当たります。
一言でいえば、あなたを知る人に「一緒に働いてどうだったか」を聞く手続きで、身元調査とは別物です。
受けた人は、もう約3人に1人|どれくらい広がっているか
まず、リファレンスチェックはもう珍しい手続きではなくなってきています。ある調査では、実施している企業は3割台、「実施していないが今後検討したい」という企業を合わせると7割を超えました。関心の高さがうかがえます。
企業の規模が大きいほど実施率は高く、従業員301名以上の企業では半数を超え、「今後検討したい」も合わせると9割近くにのぼります。中途採用の人数が多い会社ほど、採用のミスマッチを減らす仕組みとして取り入れているようです。
求職者の側から見ても、広がりは数字に表れています。転職の選考を受けたことがある人のうち、リファレンスチェックを受けた経験がある人は31.5%。逆に、誰かの転職に際して回答者として推薦された経験がある人も21.3%いました。
受けたことがある人は、すでに約3人に1人。特別なことではなくなりつつあります。
背景には、依頼のハードルが下がったこともあります。以前は外資系企業を中心に行われていましたが、オンラインで手軽に依頼できる専用のクラウドサービスが広がり、国内の企業でも取り入れやすくなりました。早期離職やミスマッチを防ぎたいという企業の課題意識とも重なって、実施の裾野が広がっています。
もう少し背景を掘ると、企業が気にしているのは早期離職です。別のマイナビの調査では、入社後半年以内に辞めた経験がある人は全体で9.1%、20代では11.0%にのぼりました。早期離職の理由としては「職場の雰囲気が合わなかった」が44.4%、「人間関係が合わなかった」が33.4%と、入ってみないと分からない相性の問題が上位を占めています。だからこそ、一緒に働いた人に働きぶりや人柄を聞いて、相性を先に確かめておこうという動きが広がっています。
ただし、すべての企業が実施しているわけではありません。導入していない企業がその理由として最も多く挙げたのは「コストをかけられないから」で、「リファレンスチェック自体を知らないから」も一定数ありました。受ける可能性は確実に上がっているものの、どの選考でも必ず行われるものではない、というのが実際のところです。
何を聞かれ、企業は何を見ているのか
では、回答者は具体的に何を尋ねられるのでしょうか。照会される内容は会社によって幅がありますが、担当してきた業務や役割、在籍していた期間、強み・弱み、チームの中でどう動く人か、といった項目が一般的です。特別に踏み込んだことを根掘り葉掘り聞かれる、というより、一緒に働いていれば自然に答えられる範囲が中心です。
ここで誤解されやすいのが、目的です。企業がリファレンスチェックで最も効果を感じているのは、応募者の嘘を暴くことではありません。効果として最も多く挙がったのは「ミスマッチによる早期離職の防止」で6割を超え、「客観的・公正な選考評価」がそれに続きました。虚偽を見抜くことは、むしろ上位ではありません。
企業がもっとも効果を感じているのは粗探しではなく、入社後のミスマッチを防ぐことです。
効果として「入社後の早期活躍の支援につながった」と答えた企業も半数近くありました。人物像や働き方が事前に分かることで、配属や受け入れの準備がしやすくなる、という面もあるようです。実施した企業の9割以上が「役に立った」と回答していることからも、多くの会社が採用の精度を上げる手段として位置づけていることが分かります。
「勝手に前職にバレる」は誤解|同意が前提の仕組み
不安の中心にある「知らないうちに前の職場に連絡されるのでは」という点について、仕組みを整理します。
本人の同意なく第三者からその人の情報を集める行為は、個人情報保護法や職業安定法、プライバシー保護の観点から問題になり得ると解されています。そのため実務では、目的・照会する相手・質問する項目などを説明し、応募者の同意を得たうえで実施するのが原則です。
つまり、自分がまったく知らないところで現職に連絡が行く、という事態は通常は考えにくいということです。同意の場面で、自分がどう扱われるのかを確認できます。
本人の同意を前提に実施するのが原則で、知らないうちに現職へ連絡が行くことは通常ありません。
同意を求められる場面では、多くの場合、何のために行うのか、誰に何を照会するのか、集めた情報をどう扱うのかが示されます。ここで不明な点があれば確認できますし、集めた情報を採用の判断以外の目的に使わない、といった取り扱いも本来はセットで説明されるものです。中身を理解しないまま署名する必要はありません。
現職に転職活動を知られたくない場合の対処もあります。回答者は自分で選べるのが一般的なので、転職活動を知っている前職の関係者などを指名し、同意の段階で「現職には伝えていない」と相談しておくとよいでしょう。加えて、同意はあくまで任意であり、断ったことを理由に不当な扱いを受けるべきではない、と一般には考えられています。
実は、受ける側にもプラスになりうる
リファレンスチェックは、受ける側にとって不利なだけの手続きではありません。むしろ好意的に受け止めている求職者のほうが多い、というデータがあります。
希望する企業の選考にリファレンスチェックがあった場合、「応募意欲が高まる」と答えた人は39.0%で、「下がる」と答えた人を上回りました。特に20代で前向きに受け止める傾向が見られます。
応募意欲が高まる理由として多かったのは、次のようなものでした。
入社後のミスマッチが減りそうだから(51.6%。20代では61.4%)
自分ではアピールしきれなかった点を、第三者が補足してくれる可能性があるから(48.0%)
より公正で客観的な視点から評価してもらえそうだから(47.7%)
第三者が、自分ではうまく言えなかった強みを補ってくれることもあります。
たとえば、あなたが縁の下で調整役を担ってきたようなタイプだと、面接では自分の貢献をうまく言葉にしにくいことがあります。そうしたとき、一緒に働いた人が「あの人がいたからチームが回っていた」と語ってくれれば、自己PRだけでは伝わらなかった価値が採用担当に届きます。自分を大きく見せるのが得意でない人ほど、受けやすい恩恵だといえます。
一方で「応募意欲が下がる」と答えた人の理由は、「転職活動を今の会社に知られたくない」が最も多く、次いで「信用されていない気がする」でした。前者は、先に触れたとおり回答者を自分で選べる仕組みで避けられます。後者についても、企業の狙いはミスマッチ防止であって、あなた個人を疑うためではないことが多い、と押さえておくと受け止めが変わります。
受けると決まったら|回答者選びと、事前のひと言
実際に受けることになったら、準備しておくとよいことがあります。難しい対策ではなく、落ち着いて臨むための下準備です。
回答者を自分で選ぶ場合、ポイントは役職の高さではありません。一緒に働いた期間が十分にあり、あなたの具体的な仕事ぶりを語れる人が適しています。肩書きが立派でも、実際の働きを知らない人では、当たり障りのない話で終わってしまいます。
頼むのは「役職が上の人」より「あなたの働きを具体的に語れる人」です。
依頼するときは、事前に一報を入れておきましょう。応募先や時期、想定される質問の方向性を軽く共有しておくと、相手も答えやすくなります。突然の照会よりも、心づもりがあるほうが、あなたのことを丁寧に話してもらえます。
依頼する相手は、1人に限らず複数名(2〜3名程度)にお願いするのが一般的です。直近の上司だけでなく、同僚や、可能なら別の時期に一緒に働いた人など、違う角度から語れる人を選ぶと、あなたの姿がより立体的に伝わります。
同意する前に、目的や照会する相手、質問される項目に納得できない点があれば、質問してかまいません。内容を理解したうえで返事をするのが安心です。
もし自分が「回答者」を頼まれたら
リファレンスチェックは、いつか自分が「答える側」に頼まれることもあります。実際、他の人の転職に際して回答者として推薦された経験がある人は21.3%いました。知人や元同僚から「回答者になってほしい」と頼まれる場面は、これから増えていくと考えられます。
頼まれたときの基本は、事実ベースで話すことです。相手をよく見せようと話を盛る必要はありませんし、逆に、聞かれてもいないネガティブな情報をわざわざ持ち出す必要もありません。あなたが一緒に働いて実際に見聞きした範囲で、率直に答えれば十分です。
答えたくない項目や、確信の持てないことについては、無理に断定しなくてかまいません。ここでも前提になるのは本人の同意です。頼んできた相手が自分の意思でリファレンスチェックに同意しているかを確認したうえで、協力するかどうかを決めましょう。
いちばん効くのは、自分の話と第三者の話がそろっていること
ここまで見てきたとおり、リファレンスチェックの本質は「第三者が、独立した立場からあなたを語る」ことにあります。だからこそ効いてくるのが、自分で提出した職務経歴書と、第三者が語るあなたが食い違わない状態をつくっておくことです。
大切なのは「盛る」ことではありません。担当した仕事や役割、そこで出した成果を、他人が読んでも同じ場面が思い浮かぶ粒度まで具体化しておくことです。たとえば「営業を担当」ではなく「既存顧客20社を担当し、解約を減らす取り組みを続けた」のように、誰が読んでも同じ場面が浮かぶ具体に落とす、ということです。解像度を上げて事実で書いておけば、照会で語られる内容と自然に一致し、それがそのまま信頼につながります。
とはいえ、自分の経歴を「他人が読んでも伝わる言葉」に整えるのは、意外と難しいものです。慣れた仕事ほど「普通のこと」に見えて、具体を書き落としてしまいます。
そこで役立つのが、Talentier〈タレンティア〉が提供しているAI履歴書・職務経歴書作成サービスのPath〈パス〉です。採用実務を知る視点で監修されていて、抽象的な言葉ではなく、具体と数字で経歴を言語化していきます。入力は箇条書きの事実からで大丈夫で、そこから採用担当に伝わる書類に整えられます。完全無料です。
下書きから整えていくのは、実際の仕事の進め方と同じ、合理的なやり方です。第三者に語られても矛盾しない、事実に裏づけられた経歴を、先に用意しておきましょう。
まとめ
リファレンスチェックは広がってきていますが、その中身は多くの人がイメージする「粗探し」とは違います。企業の狙いはミスマッチや早期離職を防ぐことにあり、本人の同意を前提に行うのが原則です。勝手に前職へ連絡が行くことは基本的にありません。
だから、身構えるよりも準備です。あなたの働きを具体的に語れる人を思い浮かべておくこと。そして、第三者の話と食い違わないように、事実で具体化した経歴を先に整えておくこと。備えができていれば、選考が最終段階に進んでも、落ち着いて臨めます。
よくある質問
Q. リファレンスチェックは拒否できますか?
同意は任意なので、断ること自体はできます。ただし企業によっては選考の前提としている場合もあるため、懸念があるときは、目的や照会する範囲を確認したうえで判断するとよいでしょう。断ったことを理由に不当な扱いを受けるべきではない、と一般には考えられています。
Q. 同意しないと不採用になりますか?
同意しないこと自体を理由に、事実上採用しないと圧力をかけるような対応は望ましくないとされています。運用は企業ごとに異なるため、不安があれば実施の目的や項目を尋ね、納得したうえで返事をするのが安全です。
Q. 現在の職場に、転職活動を知られませんか?
本人の同意を前提に実施するため、知らないうちに現職へ連絡が行くことは通常ありません。現職に知られたくない場合は、回答者を自分で選べるのが一般的です。転職活動を知っている人や前職の関係者を指名し、同意の段階で相談しておきましょう。
Q. 誰に回答を頼むのがよいですか?
役職の高さよりも、あなたと一緒に働いた期間が十分で、具体的な仕事ぶりを語れる人が向いています。事前に一報を入れ、応募先や時期、質問の方向性を共有しておくと、相手も丁寧に答えやすくなります。
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Insight〈インサイト〉:キャリア診断
Journal〈ジャーナル〉:キャリアメディア
出典
リファレンスチェックの実施状況・効果・求職者の印象に関する調査(マイナビ キャリアリサーチLab・2024年7月公開/2024年3月度中途採用・転職活動の定点調査ほか)
早期離職の経験・理由(マイナビ「正社員のワークライフ・インテグレーション調査2024年版」/2023年実績)
