安定していると言われる仕事に就いたのに、このままでいいのかと考えてしまう。
周りからは「公務員なんだから辞めるのはもったいない」と言われそうで、誰にも相談できない。
それでも年齢を重ねるほど、民間に移る道が閉ざされていく気がして、気持ちばかりが焦っていく。
公務員として働きながら、そんな思いを抱えている人は少なくないはずです。
この記事では、官公庁や都道府県・市区町村で働く行政職の人を対象に、公務員から民間への転職を考えるときに知っておきたいことを整理します。警察官や消防士、自衛官、教員は、仕事の中身も生きる経験も大きく異なるため、ここでは扱いません。
辞めたいと考える公務員は、少なくない
まず、公務員の人たちがいまどんな気持ちで働いているのかを、データで見てみます。
内閣人事局が国家公務員を対象に行ったアンケート(2025年11〜12月実施、回答者62,953人)では、「数年以内に辞めたい」と答えた人は全体の10.4%、勤務を続けることに「不安がある」と答えた人は37.8%でした。
管理職を除いて年代別に見ると、「数年以内に辞めたい」は20代以下で12.3%、30代で12.0%です。「勤務の継続に不安がある」は20代以下で39.7%、30代で43.9%にのぼります。若い世代ほど、迷いを抱えながら働いていることがわかります。
地方公務員でも、自己都合などによる「普通退職」は増えています。総務省の調査では、2024年度の地方公務員の普通退職者は78,760人で、前年度から2,678人(3.5%)増えました。
公務員を辞めたいと考えるのは、決して特別なことではありません。
辞めたい理由の上位に、「転職できなくなる不安」がある
では、辞めたいと考える理由は何なのでしょうか。
同じ内閣人事局のアンケートで、数年以内に辞めたいと答えた20代以下の非管理職に理由を聞いたところ、上位は次のとおりでした(複数回答)。
望まない転勤があるから:42.0%
将来、望むように転職できる可能性がなくなると思うから:41.5%
収入が低いから:40.2%
能力・スキルを蓄積できている実感がないから:38.6%
仕事以外の活動とのバランスがとれないから:37.9%
目を引くのは2番目です。いまの仕事そのものへの不満だけでなく、「このまま続けていたら、将来、民間に移りたくなっても移れなくなるのではないか」という不安が、辞めたい気持ちを後押ししています。
この不安はもっともです。けれど、「今すぐ辞めなければ手遅れになる」と焦って動くと、準備が足りないまま転職先を決めてしまうことにもなりかねません。実際には、公務員から民間に移るタイミングは、若いうちだけに限られているわけではありません。それを次のセクションで見ていきます。
「今しかない」という焦りは、一度脇に置いて考えてみる価値があります。
民間に移りやすいタイミングは、経験の積み方で変わる
公務員から民間への転職では、年齢によって評価されるポイントが変わります。
20代〜30代前半:伸びしろと、仕事の基礎が評価される
20代から30代前半は、民間企業でも経験の浅さより伸びしろが見られやすい時期です。公務員として身につけた文書作成や調整の基礎、まじめに仕事を進める姿勢は、業界や職種を問わず評価の土台になります。
この時期は、事務や企画、人事・総務といった職種に加えて、未経験の職種に挑戦しやすいのも特徴です。民間でキャリアを一から積み直したい人にとっては、選択肢が最も広い時期だと言えます。
40歳前後:行政の中を知っていることが、専門性になる
一方で、40歳前後まで公務員を続けてきた人にも、別の道があります。
官公庁で課長補佐から課長クラスまで経験してきた人は、民間企業の「パブリックアフェアーズ」と呼ばれる仕事に移ることがあります。政策渉外、官公庁渉外、英語ではGR(ガバメント・リレーションズ)とも呼ばれる職種です。
パブリックアフェアーズは、自社の事業に関わる法律や規制の動きを追い、官公庁や業界団体と対話しながら、事業に関わるルールづくりに関わる仕事です。役所がどのような手順で政策や規制を決めていくのかを内側から知っていることが、そのまま強みになります。新しい技術やサービスを扱う企業ほど、制度との関わりが事業を左右するため、この役割を重視する傾向があります。
都道府県や市区町村の職員にも、自治体向けにサービスを提供する企業や、公共分野のコンサルティングに移る道はあります。ただ、こうした求人の数は多くなく、一般的な道とまでは言えません。自治体職員として民間に移りたいと考えているなら、選択肢の広さという点では、若いうちに動くほうが有利です。
若いうちは伸びしろで、40歳前後は行政の経験そのもので。公務員から民間への道は、一度きりではありません。
公務員の経験は、民間でどう生きるのか
「公務員の仕事は、民間では役に立たないのでは」と心配する人もいるでしょう。けれど、行政の仕事で当たり前にやってきたことの中には、民間でも求められる経験が多く含まれています。
大切なのは、行政の言葉のままではなく、民間でも伝わる言葉に置き換えることです。たとえば、次のような言い換えができます(いずれも架空の例です)。
「予算要求の資料を作成した」→「事業の目的と費用対効果を数字で整理し、決裁者に説明して予算を確保した」
「関係課との調整を担当した」→「利害の異なる複数の部署の意見をまとめ、期限までに合意を形成した」
「窓口で住民対応をした」→「1日平均◯件の問い合わせに対応し、制度を分かりやすく説明して手続きを完了させた」
「条例・要綱の改正に携わった」→「法令やルールを読み解き、運用上の課題を整理したうえで規程の改定を進めた」
公務員の仕事は、成果が売上のような数字で表れにくいため、自分では「たいしたことはしていない」と感じがちです。けれど、何人の住民に関わったのか、どれだけの予算を扱ったのか、何部署と調整したのかといった規模を添えるだけで、仕事の大きさは伝わりやすくなります。
公務員の年金・退職金は、民間とどう違うのか
公務員を辞めるときに、気になる人が多いのが年金と退職金です。「公務員は年金が手厚いから、辞めたら損をする」という話を聞いたことがある人もいるかもしれません。ここは、仕組みを分けて見ておくと判断しやすくなります。
公的年金の部分は、民間と同じ仕組み
2015年10月の被用者年金制度の一元化によって、公務員が加入していた共済年金は、会社員の厚生年金に統一されました。1階の基礎年金と2階の厚生年金は、民間の会社員と同じ仕組みです。
差が出るのは、上乗せの年金と退職金
違いが出るのは、その上に乗る部分です。公務員には、一元化の際に廃止された旧「職域加算」に代わって、「年金払い退職給付」という上乗せの年金があり、全員が加入しています。保険料は本人と国・自治体が折半し、原則として65歳から受け取ります。
一方、民間で同じような上乗せにあたる企業年金があるかどうかは、会社によって違います。厚生労働省の調査(2023年)では、退職金や企業年金などの退職給付制度がある企業は74.9%で、そのうち企業年金の制度がある企業は31.0%でした。企業規模による差も大きく、退職給付制度がある企業の割合は、従業員1,000人以上で90.1%、30〜99人で70.1%です。
退職金と年金を合わせた水準について、人事院が国家公務員と民間を比べた調査(2022年)があります。従業員50人以上で退職給付制度がある企業に20年以上勤め、定年などで退職した人と比べると、民間が2,405.5万円、国家公務員が2,407.0万円で、ほぼ同じ水準でした。
つまり、公務員の年金と退職金は、大手企業に長く勤めた場合とは同程度で、中小企業と比べると有利だと言えます。民間に移った場合は、転職先によって上がることも下がることもあります。
民間に移ったら、転職先の条件を確かめる
公務員として働いた期間の年金払い退職給付は、退職していること、65歳以上であることなどの条件を満たせば、受け取れる仕組みになっています。具体的な扱いは、所属の共済組合で確認しておくと安心です。
そのうえで、転職先を選ぶときには、給与だけでなく、退職金制度や企業年金(確定拠出年金を含む)があるかどうか、どのような仕組みかを条件として確かめておきましょう。年収が上がっても、退職金や企業年金を含めた生涯の受け取りで見ると差が縮まる、ということもあり得ます。
動く前に確かめておきたいこと
年金と退職金のほかにも、公務員ならではの確認ポイントがあります。
辞める時期
公務員は年度の区切りで人事異動や業務が動くため、年度末で退職する人が多くなります。引き継ぎがしやすく、職場にとっても区切りがつきやすい時期です。期末・勤勉手当(ボーナス)は基準日に在職していることが支給の条件とされているので、時期を考えるときには、支給の時期もあわせて確認しておくと損を避けられます。
退職手当
退職手当は、勤続年数と退職の理由によって支給額が変わります。一般に、自己都合で勤続年数が短いほど、支給率は低くなります。いま辞めた場合にどのくらい受け取れるのかは、人事担当に確認しておくと、転職先の条件と比べやすくなります。
在職中の転職活動のルール
国家公務員には、在職中に、職務上の利害関係がある企業などへ求職することを制限するルールがあります。地方公務員にも、自治体ごとに定めがある場合があります。応募先によっては制限にかかる可能性もあるため、在職中に転職活動を始める前に、所属の制度を確認しておきましょう。
「なぜ民間なのか」を、自分の言葉で語れるようにする
公務員から民間への転職で、面接の場でほぼ必ず聞かれるのが、「なぜ公務員を辞めて、民間で働きたいのか」という質問です。
ここで「安定より成長したいから」「もっとスピード感のある環境で働きたいから」とだけ答えると、公務員から転職する人の多くが言う答えになり、相手には響きにくくなります。採用する側が知りたいのは、公務員として何を経験し、それを自社でどう生かしたいのか、という具体的な話です。
公務員を選んだ人の多くは、もともと社会や地域のために働きたいという思いを持っていたはずです。その思いを捨てる必要はありません。
行政として関わってきた課題に、今度は事業を通じて関わりたいのか。行政の現場で感じた不便さを、民間のサービスで解決したいのか。公務員として働いた理由と、民間を選ぶ理由を一本の線でつなげられると、志望動機は一気に説得力を持ちます。
とはいえ、自分の思いを、民間の採用担当者に伝わる言葉にするのは簡単ではありません。Talentier〈タレンティア〉が提供しているAI履歴書・職務経歴書作成サービスのPath〈パス〉は、職務経歴書だけでなく志望動機の作成もアシストします。採用実務の経験を持つコンサルタントが監修していて、完全無料です。行政で担ってきた仕事を整理しながら、応募する会社に合わせた志望動機の下書きを作るところから使えます。
民間の相場を知るところから始める
公務員から民間への転職で、もう一つ壁になりやすいのが、民間の給与水準や求人の相場がつかみにくいことです。公務員の給与は俸給表で決まっているため、自分の経験が民間でどのくらいの年収になるのか、見当がつかない人も多いはずです。
まずは求人を見比べて、自分の経験に近い職種がどんな条件で募集されているかを知るところから始めてみてください。Talentier〈タレンティア〉の求人サイト、Gate〈ゲート〉でも、さまざまな職種の求人を確かめることができます。公務員からの転職の支援実績がある転職エージェントに相談すれば、自分の経験がどの職種で評価されやすいか、どのくらいの年収が見込めるかを、具体的に聞くこともできます。
まとめ
公務員から民間への転職は、若いうちだけに限られた選択肢ではありません。どのタイミングで、何を手放し、何を得るのかを整理しておけば、焦らずに判断できます。
この記事のポイントを振り返ります。
数年以内に辞めたいと考える20代以下の国家公務員(非管理職)は12.3%で、その4割が「将来、転職できなくなる不安」を挙げている
20代〜30代前半は伸びしろで、40歳前後は行政の経験そのもので評価される。官僚ならパブリックアフェアーズ(政策渉外)という道もある
自治体職員の場合、40歳前後で移れる求人は多くないため、民間に移るなら若いうちのほうが選択肢は広い
公的年金の部分は民間と同じ仕組み。上乗せの年金と退職金は、大手企業と同程度で、中小企業と比べると有利
辞める時期、退職手当、在職中の転職活動のルールを事前に確かめる
「なぜ民間なのか」を、公務員として働いた理由とつなげて語れるようにする
次の一歩としては、自分が担ってきた仕事を、民間の言葉で書き出してみることをおすすめします。そのうえで求人を見比べてみると、自分がいつ、どこに向けて動くのがよいかが見えてきます。
よくある質問
Q. 公務員から民間への転職は不利ですか?
不利とは限りません。文書作成や関係者との調整、法令に沿って仕事を進める経験は、民間でも評価される土台になります。ただし、行政の言葉のままでは伝わりにくいため、民間でも伝わる言葉に置き換え、扱った予算や関わった人数などの規模を添えて説明することが大切です。
Q. 公務員から民間への転職は何歳まで可能ですか?
明確な年齢の線はありません。20代から30代前半は伸びしろが評価されやすく、未経験の職種にも挑戦しやすい時期です。40歳前後でも、官公庁での経験を生かしてパブリックアフェアーズ(政策渉外)などの職種に移る道があります。ただし自治体職員の場合、40歳前後で移れる求人は多くないため、早めに動くほうが選択肢は広がります。
Q. 公務員を辞めると、年金で損をしますか?
基礎年金と厚生年金の部分は、2015年の制度の一元化で民間の会社員と同じ仕組みになっています。差が出るのは、上乗せの年金と退職金です。公務員の水準は大手企業と同程度、中小企業と比べると有利なため、転職先の退職金制度や企業年金を確かめて比べることが大切です。
Q. 公務員は何月に辞めるのがいいですか?
業務や人事の区切りがつきやすいため、年度末に退職する人が多くなります。期末・勤勉手当の支給時期や、退職手当の額もあわせて確認し、転職先の入社時期と調整しながら決めると安心です。
関連サービス
Talentier〈タレンティア〉:はたらく全ての人を支援するサービス
Path〈パス〉:AIで履歴書・職務経歴書を作成
Gate〈ゲート〉:求人サイト
Insight〈インサイト〉:キャリア診断
Journal〈ジャーナル〉:キャリアメディア
出典
令和7年度 国家公務員の働き方改革職員アンケート結果(内閣人事局・2026年6月16日/国家公務員・回答者62,953人)
令和5年就労条件総合調査の概況(厚生労働省・2023年)
退職給付の官民比較に関する見解(人事院・2022年4月21日/従業員50人以上の民間企業3,677社・国家公務員退職者)
年金払い退職給付のしくみ(公立学校共済組合)
