いま休職している人、休職を終えて戻ったばかりの人、そして「もう限界かもしれない」と休むことを考え始めている人へ。
「休職したら、キャリアはもう終わりなんじゃないか」
「こんな自分を、雇ってくれる会社なんてあるんだろうか」
夜になるとそんな考えが頭の中をぐるぐる回って、休むために休んでいるはずなのに、少しも休まらない。もしそうだとしたら、まずお伝えしたいことがあります。
将来のことでこんなに苦しくなるのは、あなたが真面目に人生と向き合っているからです。いい加減な人は、そこまで悩みません。
そして、この記事でいちばん伝えたいことを、最初に書いておきます。
休職は、キャリアの終わりではありません。そして、今日この瞬間に何かを決める必要もありません。
この記事は、あなたを急かすためのものではありません。メンタルヘルス不調による休職とキャリアについて、正しい知識と、安心できる事実を、順番に手渡していくための記事です。読み進めるのがしんどい日は、途中で閉じてもらって構いません。しおり代わりに、気になったところだけ拾い読みしてください。何度でも戻ってこられる場所として書いています。
ひとつだけ約束してほしいのは、体調や治療に関する判断は、この記事ではなく主治医や専門家との相談を優先することです。ここで扱うのは、キャリアと制度の話だけです。
なお、休職にはメンタルヘルス不調のほかにも、がんやけがなどの身体疾患、留学など、さまざまな理由があります。この記事はメンタルヘルス不調による休職に絞って書いています。休職制度そのものの全体像は、別の記事で詳しく解説する予定です。
「自分だけじゃない」を、数字で確かめてください
不調のさなかにいると、「職場で脱落したのは自分だけだ」という感覚に飲み込まれがちです。でもそれは、事実ではありません。まず、数字で確認させてください。
厚生労働省の「令和6年 労働安全衛生調査」によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業した労働者、または退職した労働者がいた事業所の割合は12.8%。休業した労働者がいた事業所に絞っても10.2%です。
そしてこの数字は、会社の規模で大きく変わります。
事業所規模 | 休業・退職した労働者がいた割合 |
|---|---|
1,000人以上 | 91.6% |
500〜999人 | 86.9% |
100〜299人 | 55.8% |
10〜29人 | 5.7% |
従業員1,000人以上の事業所では9割超。つまり、ある程度の規模の会社なら、メンタルヘルス不調で休む人がいるのは「例外」ではなく「毎年のこと」です。
産業別では、情報通信業が39.2%と最も高く、電気・ガス・熱供給・水道業32.7%、学術研究・専門技術サービス業22.2%、教育・学習支援業20.5%、金融業・保険業20.1%と続きます。IT業界なら、5社に2社の職場で起きている計算です。
休職はあなたの弱さの証明ではなく、いまの働く環境で、誰にでも起こり得ることです。
あなたと同じように休み、回復し、また働き始めた人が、この社会には数えきれないほどいます。その事実を、まず心のどこかに置いておいてください。「自分だけ」という感覚がふっと軽くなるだけでも、この記事を読む意味はあったと思います。
お金と制度のことを、最低限だけ押さえておく
不安の正体を分解すると、その大部分は「お金」と「この先どうなるか分からないこと」です。裏を返せば、最低限の制度の知識を持つだけで、不安はいくらか軽くなります。全部を理解する必要はありません。ここに書いてあることだけで十分です。
まず知っておいてほしいのは、休職が法律で定められた制度ではないことです。休職できる期間、休職中の給与、復職の手続きは、すべて会社ごとの就業規則で決まっています。手元に就業規則を用意して、次の4点だけ確認してみてください。
休職できる期間の上限(勤続年数で変わる会社が多い)
休職中の給与の扱い(無給の会社が多数派)
復職の手続き(主治医の診断書・産業医面談など)
期間満了までに復職できない場合の扱い
給与が無給でも、健康保険の傷病手当金という制度があります。業務外の病気やケガで働けない場合に、おおむね給与の3分の2にあたる額が、通算で最長1年6ヶ月支給されるものです。一定の条件を満たせば、退職後も継続して受給できる場合があります。細かい要件は加入している健康保険や会社の担当部署に、必ず自分のケースで確認してください。
これらの制度は、堂々と使っていいものです。あなたが払ってきた保険料の、正当な対価です。
「会社に迷惑をかけているのに、お金までもらうなんて」と感じる人がいます。優しい人ほど、そう感じます。でも、その罪悪感は手放して大丈夫です。制度は、まさにこういうときのために作られています。使うことに、誰の許可もいりません。
復職か、転職か。道は3つあります
体調が上向いてくると、次の問いが浮かんできます。「戻るべきか、辞めるべきか」。でも実は、選択肢は2つではなく3つあります。
復職して、今の会社で働き続ける
いったん復職して、働きながら次を考える
復職せず、回復を待って転職する
どれが正解ということはありません。ただ、判断の軸になる問いはあります。それは「不調の主な要因は、環境にあったのか」です。
業務量、人間関係、評価のプレッシャー。要因が特定の環境要素にあり、部署異動や業務調整でそれを取り除けるなら、復職して様子を見る価値は十分あります。多くの会社には復職時の時短勤務や業務量の配慮といった仕組みがあり、慣れた環境で段階的に戻れることは、それ自体が回復の助けになります。
一方、環境調整を会社に求めても応じてもらえない場合や、要因が会社の構造そのもの(慢性的な長時間労働の文化など)にある場合は、同じ場所に戻ることが再発のリスクになります。このときの転職は「逃げ」ではありません。自分を守るための、正当な選択です。
そして2番目の道、「いったん復職して、働きながら次を考える」は、意外と語られませんが現実的な選択肢です。収入を保ちながら考えられること、そして「復職して働けている」という事実そのものが、後の転職活動で何よりの回復の証明になることが理由です。
どの道を選んでも、間違いではありません。大事なのは、勢いではなく、要因の理解にもとづいて選ぶことです。
迷って決められない日が続いても、焦らないでください。決められないのは優柔不断だからではなく、まだ心が回復の途中だからかもしれません。回復は一直線には進みません。良い日と沈む日を行ったり来たりしながら、少しずつ進むものです。決断は、心が「そろそろ考えられそうだ」と言ってくれる日まで、預けておいていいのです。
「休職中に転職活動をしてもいいですか?」への答え
休職中の人から、いちばん多く出てくる質問です。答えを先に言うと、「禁止はされていません。でも、急がないでほしい」です。
法律の面から言えば、休職中の転職活動そのものを禁止する法律はありません。そのうえで、3つの理由から慎重に考えてほしいのです。
1つ目は、体調です。
転職活動は、健康なときでも消耗します。書類を作り、面接で自分を語り、結果に一喜一憂する。この負荷は、療養中の心には想像以上に重くのしかかります。焦って動いた結果、回復が遠のいては本末転倒です。
2つ目は、制度との整合性です。
傷病手当金は「働けない状態であること」が支給の前提です。実際に働き始めれば支給は終わりますし、就労できる状態と判断される活動を受給中に行うことは、制度の趣旨との矛盾をはらみます。受給中の人は、この点を踏まえて慎重に判断する必要があります。
3つ目は、選考での説明です。
休職中に応募すれば「現在の就業状況」を必ず問われます。ここで事実と異なる説明をすると、後で深刻な問題になります(伝え方は後のセクションで詳しく扱います)。
基本線は「回復してから動く」。遠回りに見えて、それがいちばん確実な近道です。
ただし、休職中に何もできないわけではありません。求人を眺めて世の中の選択肢を知る、不調の要因を静かに振り返る、経歴をメモ程度に整理しておく。「動くこと」と「備えること」を分ければ、備えはむしろ焦りをやわらげる薬になります。体調のいい日に、できる分だけで十分です。何もしない日があっても、それは回復という立派な仕事をしている日です。
ひとつだけ、正直にお伝えしたいことがあります
ここまで読んでくれたあなたに、ひとつだけ、正直にお伝えしておきたいことがあります。書くかどうか迷いましたが、知らないまま進んで傷つくより、知ったうえで備えるほうが、きっとあなたを守れると思うので書きます。
メンタルヘルス不調による休職からの転職は、時間がかかることがあります。
実際に採用の現場を見ていると、休職歴に対して慎重になる採用担当者は確かにいます。ただ、それは悪意ではありません。正体は「不安」です。「入社後、無理をさせてしまわないだろうか」「安定して働き続けてもらえるだろうか」。採用側は確信の持てない要素に保守的に反応するため、書類で見送られることや、面接で踏み込んだ質問をされることが、増えるかもしれません。何社か続けて、うまくいかない時期があるかもしれません。
これを先にお伝えするのは、脅かすためではありません。むしろ逆です。知らずにぶつかると、不採用の通知を「やっぱり自分はダメなんだ」と受け取って、せっかくの回復まで巻き戻されかねません。でも先に知っていれば、こう受け止められます。「これは想定内。時間がかかるだけ」と。
選考で見送られても、それはあなたという人間の否定ではありません。採用側の不安に、まだ答えを渡せていないだけです。
そして、ここからが本当に大事なところです。採用側が抱えているのが「不安」なら、不安には答えを渡すことができます。
十分な回復期間を確保したという事実。焦って動かなかったこと自体が、信頼の材料になります
不調の要因を自分の言葉で説明でき、対処法を持っていること
復職後に働けた実績や、生活リズムが安定していること
この3つを持って臨む人は、採用側の目にも「自分を理解し、立て直した人」として映ります。
また、一人で頑張る必要もありません。地域障害者職業センターや医療機関のリワークプログラム(復職支援)、就労移行支援事業所など、回復から再就職までを支える公的・専門的な仕組みがあります。利用するかどうかは別として、「そういう味方が存在する」と知っておくだけでも、視界は少し明るくなるはずです。
時間がかかることと、たどり着けないことは、まったく別の話です。この道を歩ききって、自分に合う環境で長く穏やかに働いている人を、私は何人も知っています。だから、諦めないでほしいのです。
休職歴は、こう伝えれば大丈夫です
では、採用側の不安にどう答えを渡すか。いちばん気がかりであろう「休職歴の伝え方」を、法律と実務に分けて整理します。ルールを知れば、怖さはかなり減ります。
まず法律の話です。休職歴を応募書類に書く義務や、自分から申告する法的義務は、原則としてありません。履歴書や職務経歴書に休職期間の記載欄はなく、聞かれていないことを自発的に告知する義務は、一般に求職者にはないと解されています。
ただし、絶対にやってはいけないことが1つだけあります。面接などで休職や健康状態について質問されたときに、事実と異なる回答をすることです。虚偽の回答は経歴詐称と判断され、内定取り消しや入社後の処分の理由になり得ます。
一方で、企業側の質問にも制約があります。応募者の健康状態について尋ねられるのは、業務を遂行できるかどうかの判断に必要な範囲が原則とされ、プライバシーへの配慮が求められます。病名を細かく話す必要はありません。あなたのすべてを差し出す場ではないのです。
整理すると、あなたの手元にあるルールはこうです。
隠し通す義務も、洗いざらい話す義務もない
ただし、聞かれたら嘘はつかない。これだけは絶対
自分から伝えるかどうかは、選べる
そのうえで、実務的には「伝える」選択をおすすめします。理由は3つあります。入社後に業務量の調整や通院への理解といった配慮を受けやすくなり、再発のリスクを下げられること。隠したまま入社すると「知られたらどうしよう」という緊張を抱え続けることになり、それ自体が心の負担になること。そして、前年の収入額などから採用側が推測する可能性はゼロではなく、後から分かるより自分の言葉で先に説明したほうが信頼を保てることです。
伝えるときは、この3点セットで簡潔に。長く語る必要はありません。
事実:いつ、どのくらいの期間休職したか(病名まで詳細に話す必要はありません)
現在:回復しており、就業に支障がないこと。主治医の見解があればなお良い
学び:不調に至った要因を自分なりにどう理解し、これからの働き方でどう対処するか
採用側が知りたいのは過去ではなく、「これから一緒に、無理なく働いていけるか」です。3点目まで語れる人は、休職を経て自己理解を深めた人として、むしろ信頼されます。
休職の経験は、あなたの中に「自分の取扱説明書」を残してくれています。どこまで頑張ると危ないのか、どんなサインが出たら休むべきなのか。それを語れることは、弱さの告白ではなく、成熟の証明です。
同じつらさを繰り返さないために:次の環境の選び方
再スタートでいちばん避けたいのは、前と同じ構造の環境を選んでしまうことです。会社の名前が変わっても、噛み合わない構造ごと引っ越してしまっては、同じつらさが繰り返されてしまいます。
だから、次を探し始める前に、一度だけ立ち止まって振り返ってみてください。自分の不調は、何が引き金だったのか。業務量か、人間関係か、評価のプレッシャーか、仕事内容そのものか。
これは自分を責める作業ではありません。「環境と自分の、どこが噛み合っていなかったのか」を特定する作業です。犯人を探すのではなく、条件を探すのだと考えてください。うまく言葉にならなくても大丈夫です。ぼんやりとした輪郭が見えるだけでも、次の選択の精度は上がります。
自分に合う環境を選ぶには、環境の条件より先に、自分自身の特性を知ることが必要です。
同じ業務量でも平気な人と追い詰められる人がいて、同じ上司のもとで伸びる人と消耗する人がいます。優劣ではなく、特性の違いです。自分はストレスをどう受け止めるタイプなのか、感情の波はどう動くのか。それを客観的に眺める道具として、メンタルタイプ診断が使えます。40問・5〜10分・無料で、ビッグファイブ理論にグリット理論とレジリエンス理論を組み合わせた8つの軸から、自分の特性を数値で確認できます。休職の振り返りを、感覚ではなく言葉にする手がかりにしてください。自分を数値で眺めると、「責める」から「理解する」へ、視点が静かに切り替わります。
そのうえで求人を見るときは、給与や仕事内容に加えて、働き方の実態を見てください。残業の実態、業務量の調整が利くか、相談できる体制があるか。面接は「選ばれる場」であると同時に、あなたが会社を「見極める場」でもあります。対等でいいのです。求人を探す際は、求人サイトのTalentier Gate〈ゲート〉も活用してみてください。
書類づくりは、自信を取り戻す作業にもなります
最後に、応募書類の話です。
履歴書の職歴欄は、入社と退職の事実を時系列で書くのが基本で、休職期間を記載する決まりはありません。どこまで書くかは、先ほどの「伝え方の戦略」に沿って決めれば大丈夫です。
それより大事なのは、職務経歴書の中身です。休職を経験した人の書類には、共通の傾向があります。自信を失っている時期に自分で書くと、無意識に自分を小さく見せてしまうのです。
やってきた仕事を「〜などを担当」と曖昧にぼかす。実績を書きかけて「大したことではない」と手が止まる。逆に、負い目を打ち消そうとして不自然に盛ってしまう。どちらも、読み手には伝わります。そしてどちらも、あなたの本当の姿より小さいか、本当の姿ではないかの、どちらかです。
書類に必要なのは、卑下でも背伸びでもなく、やってきたことを事実のまま並べることです。
休職したという事実は、それ以前に積み上げてきた経験を消しません。担当していた業務、関わった案件、工夫したこと、出した成果。それらは全部、いまも変わらずあなたの経歴です。休んだ数ヶ月より、働いてきた数年のほうが、ずっと長いのですから。
とはいえ、「事実のまま、フラットに書く」ことは、今のあなたにはいちばん難しい作業かもしれません。そこで、AIで履歴書・職務経歴書を作成できるTalentier Path〈パス〉を使ってみてください。経験を箇条書きで入力するだけで、採用実務の経験を持つコンサルタントが監修したAIが、卑下も誇張もないニュートラルな文章に整えます。完全無料です。自分では小さく見えていた経験が、文章になって初めて「自分、ちゃんと働いてきたんだな」と思える。書類づくりが、自信を取り戻すリハビリになることは、本当にあるのです。
まとめ:諦めなくていい。ただし、急がなくていい
長い記事を、ここまで読んでくれてありがとうございました。要点をまとめます。
メンタルヘルス不調による休職は、大企業ならほぼ毎年起きている「珍しくないこと」。あなただけではない
休職は会社ごとの制度。就業規則と傷病手当金を確認し、制度は堂々と使っていい
道は3つ。復職して続ける、復職して考える、回復してから転職する。要因の理解にもとづいて選べばいい
転職活動の基本線は「回復してから」。動くことと備えることを分ける
転職には時間がかかるかもしれない。でも、見送られてもあなたの否定ではない。採用側の不安には、答えを渡せる
休職歴は「事実・現在・学び」の3点で伝えれば大丈夫。嘘をつかないこと、それだけ守ればいい
次の環境は、自分の特性を知ってから選ぶ。同じ構造に戻らないことが最優先
最後に、もう一度だけ。
回復には時間がかかります。転職にも、思ったより時間がかかるかもしれません。でも、時間がかかることと、たどり着けないことは違います。休職を経て、自分に合う環境を見つけて、長く穏やかに働いている人は、本当にたくさんいます。あなたが同じ場所にたどり着けない理由は、どこにもありません。
今日は、この記事を閉じたら、ゆっくり休んでください。判断の材料は、もうあなたの手元にあります。使うのは、心と体が「そろそろ動けそうだ」と言ってくれた日からで、十分です。その日は、必ず来ます。
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出典
令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要・事業所調査(厚生労働省・2025年公表/常用労働者10人以上の民営事業所8,304事業所)
