チームの数字を任され、後輩の面倒も見ている。現場のことはひと通り分かるようになり、この先どんな仕事に挑戦していくかを考え始めた。
30代に入り、リーダーとして現場を回している人なら、そんなタイミングを迎えているかもしれません。
管理職は社内で順番を待ってなるもの、というのが長く当たり前とされてきました。ところが最近は、管理職そのものを社外から採用する会社が増えています。
管理職として転職することは、役職が上がるだけでなく、任される仕事の範囲が変わり、経験の幅が一段広がることでもあります。
この記事では、企業の人事担当者への調査をもとに、管理職の中途採用がどれくらい広がっているのか、管理職になると何が変わるのか、そして採用の場で何が見られているのかを整理します。
なお、課長・部長にあたる役職は、会社によって「マネージャー」「GM」「グループマネージャー」など呼び名がさまざまです。本文では「管理職」「マネージャー層」と呼び、統計を引くときだけ原典の区分(課長級・部長級など)をそのまま使います。
管理職を「外から採る」会社が増えている
マイナビが中途採用を担当する人事1,600人に行った調査(2026年7月)によると、2026年1〜6月に中途採用を行った企業のうち、管理職を中途採用した企業は54.8%でした。2021年の38.1%から16.7ポイント上がり、過去5年で最も高い水準です。
背景にあるのは、管理職層の人手不足です。同じ調査で、正社員が不足していると答えた企業は43.5%でした。
役職別では「一般社員」が43.1%と最も高いものの、2021年と比べると、部長・課長クラスの不足感がいずれも約7ポイント上がり、上がり幅が大きくなっています。
中途採用そのものへの意欲も高く、今後の中途採用に「積極的になる」と答えた企業は54.6%と半数を超えました。
管理職に限らず、経験のある人を外から迎えようとする動きは続いていると言えます。
企業の動きを見ていると、こうした流れは課長クラスにとどまりません。
IT企業を中心に、部長クラス以上のポジションに転職で就ける機会も広がっています。
役職によって待遇も変わります。
厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」では、統計上の区分で課長級の月額賃金(所定内給与額)は52万9,200円、部長級は63万5,800円で、役職に就いていない人の31万500円と比べると、課長級は約1.7倍、部長級は約2倍でした。
年齢や勤続年数の違いも含んだ平均値ですが、役職によって水準がはっきり変わることは読み取れます。
転職で管理職に就くことは、社内の昇進を待つ以外の選択肢の一つになりつつあります。
なぜ社内で育てず、外から採るのか
では、企業はなぜ管理職を社外から採るのでしょうか。先ほどの調査で、管理職を中途採用した理由の上位は次の3つでした。
マネジメント経験が豊富な人材を求めたため:33.8%
高度な専門スキルを持つ人材が不足していたため:30.5%
管理職層の多様性を高めるため:30.4%
社内で育つのを待つだけでは、必要なタイミングに経験者がそろわないこともあります。新しい事業や専門性の高い領域では、その分野をよく知る人を外から迎えたほうが早い、という判断もあるでしょう。社外の視点を持つ人を管理職に加えたい、という狙いも見えてきます。
外から採った管理職への評価も高く、管理職の中途採用に満足していると答えた企業は74.2%でした。
満足の理由としては、「即戦力となる優秀な管理職を採用できた」「想定通りのスキルを持ち合わせていた」などが挙がっています。
外から迎えた管理職に企業が手応えを感じていることも、この流れを後押ししていると考えられます。
管理職になると、経験できる仕事が変わる
管理職への転職を考えるとき、役職や待遇とあわせて見ておきたいのが、任される仕事の中身がどう変わるかです。管理職になると、自分がプレイヤーとして成果を出すことに加えて、チームや組織を通じて成果を出す仕事が加わります。
マネージャー層になると、たとえば次のような仕事を担うことが多くなります。
チームの目標を決め、達成までの道筋を描く
メンバーの育成や、日々の相談への対応
メンバーの評価や、面談でのフィードバック
採用面接への参加や、チームの体制づくり
予算や人員の配分、他部署との調整
どれも、プレイヤーのままではなかなか経験できない仕事です。
自分一人では届かなかった規模の成果に関われるようになり、仕事を見る視点も、目の前の案件からチームや事業全体へと広がっていきます。
部長クラス以上になると、複数のチームをまとめる、組織の形を考える、事業の計画を立てるといった、さらに範囲の広い仕事が中心になります。
会社によって任される範囲は違いますが、役職が上がることは、経験できる仕事の段階が上がることでもあります。
管理職への転職は、肩書きが変わるだけでなく、任される仕事の範囲が広がり、経験の幅が一段上がる機会です。
マネージャー層で見られるのは、プレイヤーとしての実績とチームを動かした経験の両方
では、企業は管理職の採用で何を見ているのでしょうか?
採用理由の上位に「マネジメント経験」と「高度な専門スキル」が並んでいることは、一つのヒントになります。
課長クラスにあたるマネージャー層の採用では、企業はチームをまとめた経験だけでなく、応募者自身がプレイヤーとしてどんな実績を出してきたかも必ず見ます。
多くの職場では、マネージャーも自ら案件を持ちながらチームを率いる、いわゆるプレイングマネージャーとして動くことが求められるからです。
採用の現場でも、実務で成果を出せる力と、メンバーを動かして成果を広げる力の両方を持っているかが、マネージャー層の評価を大きく左右しています。
部長クラス以上の採用になると、企業が見るポイントも変わってきます。
自分で手を動かす比重は下がり、組織や事業をどう動かしてきたか、複数のチームをどうまとめてきたかが中心になります。
マネージャー層を目指すなら、自分で成果を出す力と、チームで成果を出す力の両方を示せることが前提になります。
肩書きがなくても、マネジメント経験は持っている
「管理職の経験がないから、管理職の求人には応募できない」と考える人もいるかもしれません。ただ、チームを動かした経験は、役職がついていなくても積み重ねられているものです。
たとえば、後輩や新人の育成を任されている。プロジェクトの進行役として、他部署を巻き込んで物事を前に進めてきた。チームの目標数字を管理し、メンバーの進み具合を見ながら手を打ってきた。
こうした経験は、係長・主任・リーダーなど呼び方は違っても、マネジメントの入り口にあたるものです。求人によって求めるマネジメント経験の水準は違うので、応募条件をよく読み、自分の経験と照らし合わせてみることが大切です。
20代のうちは、後輩指導やプロジェクトの取りまとめが、その最初の一歩になります。
いま担っている役割が、数年後に管理職を目指すときの材料になると考えておくと、日々の仕事の見え方も変わってきます。
役職名がなくても、人やチームを動かして成果を出した経験は、管理職への転職で評価される材料になります。
書類では「自分の成果」と「チームの成果」を両方見せる
管理職を目指す転職で、職務経歴書をどう書けばよいのでしょうか。ポイントは、自分が出した成果と、チームとして出した成果を、どちらも具体的に書き分けることです。
自分の成果は、担当した案件や個人の売上、自分の手で進めた改善などです。チームの成果は、何人のチームで、自分がどんな役割を担い、何を変えた結果、どんな数字や変化につながったかです。
架空の例で見てみます。
自分の成果:個人の担当として、年間売上目標を3期連続で達成
チームの成果:5名の営業チームのリーダーとして、提案資料の型と週1回の案件共有の場をつくり、チーム全体の受注件数を前年から2割伸ばした
チームの成果を書くときに入れたい要素
チームの成果は、ただ「リーダーとしてチームをまとめました」と書くだけでは、どの程度の役割だったのかが伝わりません。次の要素を入れると、読み手が具体的な姿を思い浮かべやすくなります。
チームの人数と、担当した期間
チームの中での自分の役割(目標設定、進捗管理、育成など)
自分が打った施策や、変えた仕組み
その結果として出た数字や変化
メンバーの成長や、任せられるようになった仕事
すべてを書く必要はありませんが、人数・施策・結果の3つがそろうだけでも、チームを動かした経験の解像度は大きく上がります。
どちらか一方だけでは、マネージャー層としての姿は伝わりません。自分で成果を出せることと、チームで成果を出せることの両方がそろって、はじめて企業に「この人に管理職を任せられる」と判断してもらえます。
とはいえ、自分の成果とチームの成果を整理して文章にするのは、思った以上に手間がかかります。Talentier〈タレンティア〉が提供しているAI履歴書・職務経歴書作成サービスのPath〈パス〉なら、経験を箇条書きで入力するだけで、採用実務の視点を踏まえた具体的な職務経歴書の下書きができあがります。採用実務の経験を持つコンサルタントが監修しており、完全無料です。
管理職を目指す職務経歴書では、自分の成果とチームの成果を混ぜずに、両方を具体的に示すことが大切です。
面接では「チームをどう動かしたか」を具体的に話す
書類で関心を持ってもらえたら、次は面接です。管理職の面接では、実績の大きさそのものより、その成果をどうやって出したのかを詳しく聞かれることがよくあります。
採用の現場でよく話題になるのは、たとえば次のようなテーマです。
チームの目標をどう決め、進み具合をどう確かめていたか
成果が出ていないメンバーに、どう関わったか
自分のプレイヤー業務と、マネジメントの時間をどう配分していたか
メンバー同士や他部署と意見がぶつかったとき、どう判断したか
答えるときは、そのときの状況、自分がとった行動、その結果を、順を追って話すと伝わりやすくなります。うまくいった話だけでなく、うまくいかなかったときにどう立て直したかも、マネジメントの経験として評価されることがあります。
書類に書いた「自分の成果」と「チームの成果」を、面接ではそれぞれの裏側にある行動まで話せるように準備しておくと、書類と面接の内容に一貫性が出ます。
管理職の面接では、成果の大きさだけでなく、チームを動かした過程を自分の言葉で話せることが大切です。
管理職の求人は、入る前に中身を確かめる
管理職の求人は、同じ「マネージャー」という名前でも、会社によって中身が大きく違います。入社してから想像と違ったとならないよう、次の点は求人票と面接で確かめておきましょう。
部下の人数と、チームの構成
採用・評価・予算など、どこまでの権限を持つのか
自分自身が担うプレイヤー業務の比率
管理職として、何をもって評価されるのか
先ほどの調査では、管理職の中途採用について企業側から「面接内容と実際との差が大きい」という声も挙がっていました。こうしたずれは、採用する側にとっても、入社する側にとっても避けたいものです。面接は選ばれる場であると同時に、自分が役割を確かめる場でもあると考えて、遠慮なく質問してみてください。
管理職の求人を探すときは、Talentier〈タレンティア〉の求人サイト、Gate〈ゲート〉で、気になるポジションの仕事内容や求める経験を見比べてみると、自分の経験がどの求人に合いそうかが見えてきます。
同じ管理職の求人でも中身は会社ごとに違うので、役割と権限を確かめてから選ぶことが大切です。
まとめ
管理職のポストは、社内で順番を待つだけのものではなくなりつつあります。管理職を中途採用する企業は5年前から大きく増え、課長クラスだけでなく、部長クラス以上のポジションに転職で就ける機会も広がっています。管理職になれば、チームの目標づくりや育成、評価など、任される仕事の範囲も広がります。
管理職への転職を少しでも考えているなら、まずは次のことから始めてみてください。
これまでの仕事を「自分の成果」と「チームの成果」に分けて書き出してみる
後輩育成やプロジェクトの取りまとめなど、役職がなくても担ってきた役割を洗い出す
気になる管理職求人を見て、求められるマネジメント経験と自分の経験を照らし合わせる
自分で成果を出す力とチームで成果を出す力を言葉にできれば、一段上の仕事を任される機会は社外にも広がっています。
よくある質問
Q. 役職がなくても、管理職の求人に応募できますか?
求人によって求めるマネジメント経験の水準は違うため、応募条件をよく確認することが大切です。役職名がなくても、後輩の育成やプロジェクトの取りまとめなど、チームを動かした経験は評価の材料になります。自分の経験を具体的に書き出し、条件と照らし合わせてみてください。
Q. 30代で管理職として転職するのは早いですか?
一概に早いとは言えません。マネージャー層の採用で企業が見ているのは、年齢よりも、プレイヤーとしての実績とチームを動かした経験の両方を示せるかどうかです。30代でリーダーとしての経験を積んでいるなら、任される仕事の幅を広げる選択肢の一つとして検討する価値はあります。
Q. プレイングマネージャーの経験しかないと、管理職の転職で不利ですか?
課長クラスにあたるマネージャー層では、プレイングマネージャーとしての経験は、企業からむしろ求められることが多い経験です。自分で成果を出しながらチームも動かしてきたことは、強みとして伝えられます。書類では、自分の成果とチームの成果を分けて具体的に示すと伝わりやすくなります。
Q. 管理職の求人は、どうやって探せばいいですか?
求人サイトで「マネージャー」「管理職」などの職種や役職で探すほか、気になる会社の採用ページも確認してみてください。会社によって呼び名が違うので、「GM」「グループマネージャー」「リーダー」など、いくつかの言葉で探すと見つけやすくなります。
Q. 管理職として転職して後悔しないためには、何を確かめればいいですか?
部下の人数、持てる権限、自分が担うプレイヤー業務の比率、評価のされ方を、求人票と面接で確かめておくことが大切です。同じ管理職でも中身は会社ごとに違うため、入社前に役割をすり合わせておくと、入社後のずれを防ぎやすくなります。
関連サービス
Talentier〈タレンティア〉:はたらく全ての人を支援するサービス
Path〈パス〉:AIで履歴書・職務経歴書を作成
Gate〈ゲート〉:求人サイト
Insight〈インサイト〉:キャリア診断
Journal〈ジャーナル〉:キャリアメディア
出典
中途採用実態調査2026年版(マイナビ・2026年9月/2026年1〜6月に中途採用業務を担当した人事担当者・n=1,600)
令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況(厚生労働省・2026年3月/10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所)
