「若手で年収1000万円、2000万も夢ではない」
2026年10月、静岡放送がこうした見出しで、建設会社で現場の仕事に就く若手社員を取り上げました。記事の見出しには「自分の努力次第で1000万、2000万に」という言葉も並び、紹介された会社では、大学を卒業して現場の仕事を目指して入社する社員が年々増えているそうです。
ほかにも今年に入ってから、経済誌やテレビで、現場で働く人の収入の伸びを取り上げる特集が組まれています。建設や製造、運輸といった、いわゆるブルーカラーの仕事が、いま注目を集めています。
AIで事務の仕事が減るという話を聞くたびに、少し不安になる。そんなときに「現場の仕事なら稼げるし、AIにも奪われない」という話を見かければ、気持ちが動くのは自然なことです。
では、「ブルーカラーは稼げる」という話は、実際のところどうなのでしょうか。この記事では、公的な統計や調査をもとに、現場の仕事の給料がどれくらい伸びているのか、働き方はどう変わってきているのかを確かめます。あわせて、現場の仕事への転職を考えるときに、どんな点を見て選べばよいかもまとめます。
現場の仕事に、いま追い風が吹いている理由
ブルーカラーが注目される背景には、大きく分けて人手不足とAIへの不安があります。
たとえば建設業では、国土交通省の資料によると、2023年時点で就業者の36.6%が55歳以上で、29歳以下は11.6%にとどまります。ベテランが引退していくなかで、次の世代の担い手が強く求められている状況です。人が足りなければ、企業は給料や待遇を良くして人を集めようとします。その流れが、「現場の仕事の給料が上がっている」という報道につながっています。
もう一つが、AIへの不安です。学情が20代向け転職サイトの利用者のうち21〜29歳の190人に行った調査(2026年7〜8月)では、生成AIの普及で事務職や一般職の仕事が減ると思う人が84.7%にのぼりました。
同じ調査で、ブルーワーカー職種に「少し興味を持ったことがある」「検討したことがある」「実際に応募したことがある」と答えた人は、合わせて48%でした。イメージとしても、「手に職がつく」が49.5%、「専門スキルを身につけられる」が41.1%と、前向きな声が多く挙がっています。
働き手を求める企業と、新しい選択肢を探す20代が重なり、現場の仕事への関心は確実に高まっています。
給料は、実際に大きく伸びている
では、給料は本当に上がっているのでしょうか。
リクルートワークス研究所の古屋星斗氏は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとに、2020年から2025年にかけての職種別の年収の変化を分析しています(2026年4月公表)。この分析での年収は、6月の月給を12倍して前年の賞与を足した概算値で、フルタイムで働く人を対象に、役職者を除いて比べています。
平均を大きく上回って伸びた現場の仕事
全体の年収(概算)は、2020年の487.3万円から2025年には545.6万円へ、+12.0%増えました。そのなかで、現場の仕事には平均を大きく上回って伸びたものが並びます。
タクシー運転者:+50.3%
自動車組立従事者:+25.0%
製銑・製鋼・非鉄金属製錬従事者:+24.3%
塗装工など:+23.9%
同じ期間の物価の上昇率は+11.9%でしたから、これらの仕事は物価を大きく上回るペースで給料が伸びていることになります。古屋氏は、人手不足が賃金の上昇に直結しやすい現場の仕事が、引き続き上位で目立っていると分析しています。
なお、比較の起点の2020年はコロナ禍の影響を大きく受けた年です。タクシーのように移動に関わる仕事の伸びには、その落ち込みからの回復分も含まれています。
建設の賃金の基準も、14年連続で上昇
建設業でも、賃金の目安になる国の指標が上がり続けています。国土交通省が公共工事の積算に使う「公共工事設計労務単価」は、2026年3月から全国全職種の加重平均で2万5,834円になり、14年連続の引き上げで初めて2万5,000円を超えました。
これは作業員1人あたりの1日の賃金の基準となる額で、前年度からは全国全職種の単純平均で4.5%上がっています。
現場の仕事の給料が伸びているのは、話題づくりではなく、統計でも確かめられる流れです。
働き方も、変わり始めている
給料と並んで、現場の仕事で気になるのが働き方です。ここでも変化が進んでいます。
建設業では、2024年4月から時間外労働に罰則付きの上限規制が適用されました。国土交通省の資料によると、これまでの働き方改革の取り組みで、建設業の労働時間は他の産業よりも大きく減ってきています。2023年度の年間の実労働時間は、全産業の1,956時間に対して建設業は2,018時間と、まだ少し長いものの、差は縮まりつつあります。
建設業法の改正も段階的に施行されてきました。国が示す「労務費の基準」を著しく下回る見積もりや契約が禁止されるなど、働く人の賃金を守る仕組みが整えられています。国土交通省は、建設業を「給与がよい」「休日がとれる」「希望がもてる」仕事にしていく、という目標も掲げています。
かつての「きつい」というイメージだけで判断すると、いまの現場の姿を見落としてしまうかもしれません。
ホワイトカラーから移った人は、どう感じているか
実際に現場の仕事へ移った人は、どれくらいいて、どう感じているのでしょうか。レバレジーズが現在ブルーカラー職で働く724人に行った調査(2026年3月)があります。回答者の業界は、製造業45.4%、建設業20.6%、物流・運輸20.6%が中心です。
約5人に1人は、ホワイトカラーからの転職組
いまの仕事に就いた経緯は、「他の現場職から転職」が45.2%、「新卒で入社」が31.5%、そして「ホワイトカラーから転職」が20.4%でした。約5人に1人が、事務や営業などの仕事から現場に移ってきた人です。
いまの仕事を選んだ理由は、「手に職がつくから」13.7%、「体を動かす仕事が好きだから」13.5%、「収入が良いから」13.3%がほぼ並んでいます。20代に限ると、「AIに代替されにくい安心感があるから」が14.5%、「人手不足で転職先に困らないイメージがあったから」が13.1%と、上位に挙がりました。
働いてみて、良い意味で想像と違ったこと
仕事のやりがいで最も多かったのは「生活を支えられる収入が得られる」で40.9%でした。「自分の技術・スキルが活かせる」25.3%、「仕事の成果が目に見える」21.3%と続きます。
働く前のイメージとのギャップについては、「ギャップはなかった」が41.0%でした。ギャップがあった人のなかでは、良い意味のギャップとして「休日・休暇が取りやすい」「人間関係が穏やかだった」が、どちらも37.1%挙がっています。
今後のキャリアについて「ホワイトカラー職に転職したい」と答えた人は16.6%にとどまりました。多くの人は今の仕事を続けるか、同じ職種のなかでの転職や独立を考えています。
現場の仕事に移った人の多くが、その仕事を続けていきたいと考えています。
給料が伸びやすい仕事を選ぶためのポイント
現場の仕事の給料が伸びているとはいえ、すべての仕事、すべての会社が同じように伸びているわけではありません。転職を考えるなら、次の点を見て選ぶと、伸びている流れに乗りやすくなります。
賃金が市場で決まる仕事かどうか
まず、その仕事の賃金がどう決まるかを確かめます。同じ分析では、介護職員は+7.0%、看護師は+6.8%、バス運転者は+5.2%と、伸びが平均を下回りました。古屋氏は、これらが公的な制度や予算の制約のなかで賃金が決まる「公定価格」の領域の仕事であることを指摘しています。
給料の伸びを重視するなら、製造やタクシー、塗装のように、人手不足がそのまま給料に反映されやすい、市場で値段が決まる仕事に目を向けるのが近道です。
経験や資格で給料が上がる仕組みがあるか
次に、入ったあとに給料が上がる道筋があるかを見ます。求人票の「月給」だけでなく、資格手当や、経験に応じた昇給の仕組みが書かれているかを確認しましょう。
現場の仕事は、扱える作業や資格が増えるほど評価されることが多いため、最初の給料より、その後の伸び方に目を向けると選びやすくなります。
休日と労働時間を、数字で確かめる
三つ目が、休日と労働時間です。学情の調査で、ブルーワーカー職種を検討しなかった20代に、どんな条件があれば前向きになれるかを聞いたところ、「土日祝休み」が58.4%、「年間休日の多さ」が54.5%で、「年収アップ」の44.2%を上回りました。20代が気にしているのは、収入とあわせて、生活と両立できるかどうかです。
レバレジーズの調査では、働いてみて「給与が想定より低かった」と感じた人もいました。会社による差は大きいので、年間休日の日数、週休2日かどうか、残業時間の目安を、言葉ではなく数字で比べておくと安心です。
体力面は、仕事の中身で考える
学情の調査では、ブルーワーカー職種のイメージとして「体力的に大変そう」が70.0%で最も多く挙がりました。ただ、体力の必要さは仕事によって大きく違います。
重量物を扱う仕事もあれば、機械の操作や検査、運転のように、体力より集中力や正確さが求められる仕事もあります。「現場の仕事は体力的にきつい」とひとまとめにせず、その仕事の1日の中身を調べてみると、自分に合う仕事が見つかりやすくなります。
一歩踏み出す前に、やっておきたいこと
現場の仕事への転職が気になってきたら、応募の前に二つのことを整理しておくと、選びやすくなります。
自分が仕事に何を求めているかを知る
一つは、自分が仕事に何を求めているかです。収入を伸ばしたいのか、休日を確保したいのか、手に職をつけたいのか。何を重視するかが決まっていると、数ある求人のなかから自分に合う仕事を選びやすくなります。
Talentier〈タレンティア〉の自己分析サービス、Insight〈インサイト〉のメンタルタイプ診断では、40問・5〜10分・無料で、やり抜く力やストレス耐性など8つの軸から自分の傾向を確認できます。Big Five、グリット理論、レジリエンス理論をもとにした独自の設計で、自分が力を発揮しやすい環境を考える手がかりになります。
求人を、条件の数字で見比べる
もう一つは、求人を条件で見比べることです。同じ職種でも、年間休日や手当、昇給の仕組みは会社によって違います。
Talentier〈タレンティア〉の求人サイト、Gate〈ゲート〉で、気になる職種の求人をいくつか並べ、給料だけでなく休日や働き方の条件まで比べてみると、自分に合う会社の姿が具体的に見えてきます。
まとめ
ブルーカラーの給料が上がっているという報道は、統計でも裏づけられました。人手不足を背景に、市場で賃金が決まる現場の仕事では給料が大きく伸び、働き方の改善も進んでいます。ホワイトカラーから現場に移る人も、もう珍しくありません。
気になっているなら、まずは次のことから始めてみてください。
気になる職種を一つ選び、給料がどう決まる仕事かを調べる
求人を3件ほど並べ、年間休日・手当・昇給の仕組みを見比べる
自分が仕事で一番大切にしたいものを、収入・休日・手に職のなかから決めておく
伸びている仕事と、自分に合う会社を選べば、現場の仕事への転職は新しいキャリアの選択肢になります。
よくある質問
Q. ブルーカラーで年収1000万円は本当に目指せますか?
年収1000万円を超える現場の技能者を紹介する報道は実際にあり、努力次第で目指せる道はあります。ただし、すべての人がそこに届く水準ではありません。国土交通省の資料では、2023年の建設業の生産労働者の年収は432万円でした。資格や経験で給料が上がる仕組みがある会社を選ぶことが、高い収入への近道です。
Q. 未経験や20代後半からでも、現場の仕事に転職できますか?
現在ブルーカラー職で働く人への調査では、約5人に1人がホワイトカラーからの転職者でした。人手不足の職種では、未経験者の採用や資格取得の支援を打ち出す求人も見られます。教育の体制や休日の条件を求人ごとに確かめておくと、安心して転職できます。
Q. 現場の仕事はAIに奪われないというのは本当ですか?
現在ブルーカラー職で働く人への調査では、自分の仕事がAIに代替されると「思わない」が35.2%で、「可能性がある」の29.0%を上回りました。現場で働く人自身も、AIによる影響を比較的小さいと感じていることが分かります。ただし、AIへの不安だけで職種を選ぶより、自分に合う仕事かどうかもあわせて考えるのがおすすめです。
Q. いまはホワイトカラーよりブルーカラーのほうが給料が高いのですか?
給料の伸び率では、一部の現場の仕事がホワイトカラーの多くの仕事を上回っています。一方、平均的な水準では、まだホワイトカラーのほうが高い分野もあります。伸び率と水準の両方を、気になる職種ごとに確かめておくと判断しやすくなります。
Q. 現場の仕事に転職して後悔しないためには、何を確かめればよいですか?
現在ブルーカラー職で働く人への調査では、良い意味で想像と違った点として「休日・休暇が取りやすい」「人間関係が穏やか」が挙がる一方、「給与が想定より低かった」と感じた人もいました。会社によって条件の差が大きいため、応募する会社の給与・休日・昇給の仕組みを、数字で確かめておくことが大切です。
関連サービス
Talentier〈タレンティア〉:はたらく全ての人を支援するサービス
Path〈パス〉:AIで履歴書・職務経歴書を作成
Gate〈ゲート〉:求人サイト
Insight〈インサイト〉:キャリア診断
Journal〈ジャーナル〉:キャリアメディア
出典
「自分の努力次第で1000万、2000万に」若手で年収1000万円も夢じゃない?「ブルーカラー」人気の背景にある人手不足とAIの台頭【イマコレ】(静岡放送・2026年10月1日)
特集「現場の復讐 年収1000万円、ブルーカラー争奪戦」(日経ビジネス・2026年)
「稼げる仕事」の変化(2026年版)―伸びる現業職・専門職、停滞する公定価格職種(リクルートワークス研究所・古屋星斗・2026年4月/厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」をもとにした分析)
建設業における働き方改革 令和6年度(国土交通省 中部地方整備局・2024年9月/労働時間は厚生労働省「毎月勤労統計調査」)
令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について(国土交通省・2026年2月)
改正建設業法について(国土交通省 不動産・建設経済局 建設業課・2024年12月/就業者の年齢構成は総務省「労働力調査」令和5年、賃金は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年、労働時間・出勤日数は同「毎月勤労統計調査」令和5年度)
ブルーワーカー職種への転職/就職意向に関する調査(学情・2026年8月/20代専門転職サイト「Re就活」来訪者の21〜29歳・n=190)
ブルーカラー職のキャリア実態調査(レバレジーズ・2026年4月/現在ブルーカラー職に従事している人・n=724)
