「手続きが大変そう」で、一歩が止まっていませんか
転職したい気持ちはあるのに、「退職や入社の手続きが面倒そう」という理由で、なんとなく動き出せない。そんな人は少なくありません。健康保険はどうなる、年金は、税金は……と考え始めると、やることが山ほどあるように感じてしまいます。
けれど、実際に整理してみると、手続きの多くは会社がやってくれるもので、自分で動く場面は驚くほど限られています。しかも、自分でやることは、期限も手順もはっきりしていて、順番に片づけていけば迷いません。
この記事では、転職にともなう手続きの全体像と、自分が実際にやるべきことだけを、シンプルに整理します。読み終わるころには、思っていたほど大変ではない、と感じてもらえるはずです。
まず、自分に手続きが必要か|「空白期間があるか」で決まる
転職の手続きで自分が動く必要があるかどうかは、退職と入社のあいだに「空白期間」があるかで、ほぼ決まります。
あなたの状況 | 健康保険・年金の手続き |
|---|---|
退職の翌日から次の会社に入る(空白なし) | 新しい会社がまとめて手続きする。自分ですることは基本的にない |
退職から入社まで日が空く、または次が未定(空白あり) | 健康保険と年金の切替を、自分で期限内に行う |
つまり、次の会社がすぐに決まっていて間が空かないなら、健康保険も年金も雇用保険も、新しい勤務先が手続きしてくれます。自分でやることは、ほとんどありません。手続きに身構える必要があるのは、間が空く場合だけ、と考えて大丈夫です。
ここでいう空白とは、1日でも間が空くかどうかです。退職日の翌日がそのまま入社日であれば、切替の手続きは必要ありません。逆に、数日でも間が空く場合は、その期間の健康保険と年金を自分で用意することになります。
退職のときに「返すもの」「受け取るもの」
空白があってもなくても、退職時に共通して押さえておきたいのが、会社に返すものと、会社から受け取るものです。ここさえ押さえておけば、大きな抜けは防げます。
会社に返すもの。
健康保険証(家族の分も含む)
社員証、入館証、名刺
会社から貸与されたパソコンや備品、通勤定期など
会社から受け取るもの。
離職票(失業給付を受けるときに必要。退職後に交付されます)
源泉徴収票(年末調整や確定申告に必要)
雇用保険被保険者証
基礎年金番号がわかるもの(年金手帳など。会社が預かっている場合)
とくに離職票と源泉徴収票は、あとで必ず使う書類です。離職票は失業給付の申請に、源泉徴収票は次の会社での年末調整(または自分で行う確定申告)に使います。どちらも退職時にその場でもらえるとは限らず、後日郵送されることが多いので、いつ頃届くかを退職前に会社へ確認しておくと安心です。離職票は、会社がハローワークに手続きをしてから発行されるため、退職後2週間ほどかかることもあります。予定を過ぎても届かないときは、会社に催促して問題ありません。受け取った書類は、まとめて保管しておきましょう。
転職先が決まっている人|やることは、ほぼない
退職の翌日から次の会社に入るなど、間を空けずに転職する場合、健康保険・厚生年金・雇用保険の手続きは、すべて新しい勤務先が行います。自分でやるのは、求められた書類を提出することくらいです。
新しい勤務先に提出するのは、前職の源泉徴収票(年末調整に使います)、雇用保険被保険者証、基礎年金番号がわかるものなどです。会社から案内があるので、それに沿って渡せば済みます。
住民税についても、手続きをすれば新しい会社の給与から天引きを続けられます。このように、空白がなければ、転職の手続きで自分が負担に感じる場面はほとんどありません。
空白期間がある人①|健康保険は3つから選ぶ
退職から入社まで間が空く場合は、その期間の健康保険を自分で用意します。選択肢は次の3つです。
選択肢 | 手続きの期限 | 保険料の目安 |
|---|---|---|
前の会社の健康保険を続ける(任意継続) | 退職日の翌日から20日以内 | 在職中の保険料の全額(上限あり)。最長2年間 |
国民健康保険に入る | 退職後14日以内が目安 | 前年の所得をもとに市区町村が計算 |
家族の扶養に入る | 扶養に入るとき | 自己負担なし(収入などの条件あり) |
任意継続は、在職中に入っていた健康保険を退職後も続ける仕組みで、退職日の翌日から20日以内の申請が必要です。加入できるのは最長2年で、保険料は会社が負担していた分もなくなるため全額自己負担になりますが、上限が設けられています。
国民健康保険は、お住まいの市区町村で手続きします。保険料は前年の所得で決まります。どちらが安くなるかは人によって違うので、両方の保険料を確認して選ぶのが確実です。家族に扶養してもらえる条件(年収130万円未満などが目安)を満たすなら、扶養に入るのがもっとも負担が軽くなります。
任意継続と国民健康保険のどちらが安くなるかは、前年の収入で傾向が分かれます。任意継続の保険料は退職時の給与をもとに決まりますが上限が設けられているため、前年の収入が高かった人は任意継続のほうが割安になりやすい傾向があります。逆に、前年の収入が低かった人や、退職で収入が大きく下がる人は、前年所得で決まる国民健康保険のほうが安くなることもあります。国民健康保険の保険料は市区町村の窓口で試算してもらえるので、任意継続の保険料(加入していた健康保険に問い合わせます)と見比べて決めるとよいでしょう。
なお、切替の手続きが数日遅れて保険証が手元にない期間があっても、加入すれば資格は退職日の翌日にさかのぼって認められます。その間に医療機関にかかって窓口でいったん全額を支払った場合も、あとから申請すれば保険の負担分は払い戻されます。無保険になってしまう、と過度に心配する必要はありません。実際の保険料や締切は市区町村や健康保険によって異なるため、正確な内容は窓口で確認してください。
空白期間がある人②|年金は国民年金に切り替える
空白期間があるあいだは、年金も厚生年金から国民年金に切り替えます。手続きは、退職日の翌日から14日以内に、お住まいの市区町村の窓口で行うのが原則です。
手続きには、基礎年金番号がわかるもの、本人確認書類、退職日が確認できる書類(離職票や退職証明書など)を用意します。
収入が途切れて保険料を納めるのが難しいときは、放置せず、保険料の免除や納付猶予の制度を利用しましょう。申請先は市区町村の窓口で、認められれば未納の扱いにならず、年金を受け取るために必要な期間にも算入されます。ただし、免除された期間は将来受け取る年金額が満額より少なくなり、猶予された期間は年金額に反映されません。あとから追納すれば満額に近づけられるので、余裕ができたら納めておくとよいでしょう。いちばん損なのは未納のまま放置することなので、払えないときこそ窓口に相談してください。次の会社に入れば、また会社が厚生年金の手続きをするので、自分での手続きはそこで終わります。
失業給付を受けるなら|離職票を持ってハローワークへ
空白期間に失業給付(雇用保険の基本手当)を受けたい場合は、会社から受け取った離職票を持って、お住まいを管轄するハローワークで求職の申し込みをします。
離職票は、退職後に会社からハローワークを経由して発行されるため、手元に届くまで少し時間がかかります。届いたら、早めに手続きに行きましょう。失業給付の金額や受け取り始める時期、自己都合退職の給付制限などは、別の記事で詳しく扱っています。
退職前から入社後まで|いつ、何をするか
全体の流れを時間順に並べると、次のようになります。自分が動く場面がいつ来るかが見えると、さらに安心できます。
退職が決まったら(在職中):離職票と源泉徴収票がいつ届くかを会社に確認する。応募書類も、この時期に整えておくと後が楽です
退職日:健康保険証や貸与品を会社に返却する
退職後すぐ(空白がある場合):14日以内に国民年金へ切替、健康保険を選んで加入する(任意継続は20日以内)。届いた離職票を持ってハローワークへ
入社時:新しい会社に、源泉徴収票・雇用保険被保険者証・基礎年金番号がわかるものを提出する
その年の年末:新しい会社が、前職分も合わせて年末調整をしてくれる(年内に再就職しなかった場合は、翌年に自分で確定申告)
このうち、自分が主体的に動くのは、空白があるときの健康保険と年金の切替くらいです。あとは、会社の案内に沿って書類をやり取りしていけば進みます。
まとめると、自分でやるのはこれだけ
ここまでを、自分が実際にやることだけに絞って並べると、次のようになります。
空白なく次の会社に入る人がやること。
前の会社に、保険証や貸与品を返す
前の会社から、離職票・源泉徴収票などを受け取る
新しい会社に、求められた書類を提出する
退職から入社まで空白がある人が、これに加えてやること。
健康保険を3つの選択肢から選んで手続きする(任意継続は20日以内)
国民年金への切替を14日以内に市区町村で行う
失業給付を受けるなら、離職票を持ってハローワークへ
並べてみると、そう多くありません。しかも期限と手順ははっきりしています。手続きを理由に転職をためらう必要は、ほとんどないと言っていいでしょう。
手続きを軽くする、ちょっとした準備
手続きと同じで、応募書類の作成も「やることが多そう」と身構えてしまいがちです。けれど、実際に手を動かしてみると、思ったより簡単に片づくものです。
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手続きも書類も、始めてみれば転職のハードルは思ったより低い、というのが実際のところです。身構えていた部分から、ひとつずつ片づけていきましょう。
まとめ
転職の手続きは、次の会社がすぐ決まっていれば大半を新しい会社がやってくれるので、自分ですることは多くありません。自分で動くのは、退職と入社のあいだに空白があるときの、健康保険と年金の切替が中心です。
まずは、前の会社に返すものと受け取るものを押さえる。空白があるなら、健康保険と年金の切替を期限内に行う。これだけ分かっていれば、手続きで慌てることはありません。なお、保険料や締切などの細かい点は状況によって異なるため、詳しくは市区町村や各窓口で確認してください。
よくある質問
Q. 転職先がすぐ決まっていれば、健康保険や年金の手続きは自分でやりますか?
原則として不要です。間を空けずに次の会社へ入る場合は、健康保険・厚生年金・雇用保険とも新しい勤務先が手続きします。自分で切替が必要になるのは、退職と入社のあいだに空白があるときだけです。
Q. 健康保険は、任意継続と国民健康保険のどちらが得ですか?
人によって異なります。任意継続は在職中の保険料の全額(上限あり)、国民健康保険は前年の所得で決まります。両方の保険料を確認して、安いほうを選ぶのが確実です。
Q. 離職票はいつもらえますか?
退職後に、会社からハローワークを経由して発行されるため、手元に届くまで少し時間がかかります。失業給付を受けるのに必要な書類なので、届いたら早めにハローワークへ行きましょう。
Q. 手続きを期限内にできなかったら、どうなりますか?
健康保険や年金の未加入・未納の期間が生じることがあります。気づいた時点で早めに窓口へ相談すれば、さかのぼって加入したり、年金の免除・猶予を申請したりできる場合があります。放置せず相談するのが大切です。
Q. 退職と入社のあいだが1日も空かなければ、何もしなくていいですか?
健康保険・年金・雇用保険は新しい会社が手続きするので、自分での切替は不要です。やることは、前の会社への返却物と受取物の確認、そして新しい会社への書類提出だけです。
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出典
任意継続(給付と手続き)(全国健康保険協会・協会けんぽ)
会社を退職したときの国民年金の手続き(日本年金機構)
